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監督交代は意味がない!? 50年間の統計では「効果は何もない」という結論も、その成否を分ける決定的な要素とは? 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/07/31 17:00

監督交代は意味がない!? 50年間の統計では「効果は何もない」という結論も、その成否を分ける決定的な要素とは?<Number Web> photograph by Getty Images

30年ぶりに降格した降格したシャルケ。4度の監督交代も効果を発揮しなかった

 それでもホイアーは、こう反論する。

「新しいほうきは、古いほうきよりも綺麗に掃除できると考えられがちですが、それは誤った解釈なんです。試合の結果以外の数字を調べると、1試合で作り出しているゴールチャンス数や相手に許したチャンス数など、マインツは連敗中の時期でも、その後と同じように優れた数字を残していました。序盤戦は様々な不運も重なり、通常なら勝点16に相応しい試合をしていたのですが、勝点6にとどまっていたという見方が正しいと私は考えています。新監督が来たあとは試合運びに沿った形で勝点を獲得できましたが、監督を交代しなくても、同じような展開になることは十分にあり得たのではないでしょうか」

運、不運は長期的に見ると平均化されてくる

 ホイアーは、サイコロを例に出して次のような説明もしていた。

「何人かで集まってサイコロを10回連続で振り、一番少ない平均値を出した人が交代するというゲームをしたとします。交代で入った人が抜けた人よりも少ない平均値を出したとしても、統計学的にはそこまで不思議ではないのです。また、交代した人が新しく入った人より結果的にいい数字を出せないかというと、そういうわけでもない。交代せずに続けて10回サイコロを振ったら、それまで以上の数字を出せる可能性はあるのです」

 監督交代には、そうした側面があるという。

 客観的に見て、戦績が平均値や期待値を下回ると監督交代の道が生じるが、そこには運、不運の要素も含まれていたりする。運、不運の要素は長期的な視点で見るとどこかで平均化されてくる。

 だから、「平均値を境に良くなったり悪くなったりするのは、ある意味自然なこと」とホイアーは主張する。

 もちろん、監督を交代しても何かが起きるという保証はない。一方で、監督交代がまったく効果を生み出さないこともないだろう。

 だからこそ首脳陣は、どの監督を、どのような理由と展望によって後任とするのかを明確にする必要がある。ホイアーのデータが示しているのは、その部分の認識がずれているからではないだろうか。

「ゴールチャンス」とは何なのか?

 結果が出ていないならば、チームの何が悪くて、なぜうまくいっていないのかの原因を究明する必要がある。プレー内容が悪くないのに「イメージと違う」という理由だけで監督を切ってしまったら、そこからさらに転落することだってありうるわけだ。

 サッカーは相手より1点でも多くゴールを決めると勝てる。勝つためにはゴールが必要で、ゴールを決めるためにはシュートが欠かせない。それは、誰もが分かっていることだ。だから、どの監督もゴールを決めるための知恵を絞り出している。

【次ページ】 空気感を変えることに成功したとしても……

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