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あだ名は白豚、髭愛好家…“井上康生以来の金メダリスト”25歳ウルフ・アロンが「負けない柔道家」になるまで
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2021/07/30 17:05
2000年シドニー五輪の井上康生(現男子日本代表監督)以来となる男子柔道100kg級金メダリストとなったウルフ・アロン
「日本だと髭って不潔みたいに思われるけど、整った髭は格好いいと思うんですよ。その考え方を自分が整えて伸ばすことで変えてきたいですね」
ただ、柔道の試合当日は剃らないといけない。東京五輪ではきれいに髭を剃り、さっぱりした表情で戦いの舞台に上った。減量も上手くいき、コンディションも良かったという。
チョグハムとの激闘の後には…
初戦の3回戦ではフラモフ(ウズベキスタン)に対して、1分23秒に浮技で一本勝ちし、準々決勝ではパルチク(イスラエル)から3分28秒に大内刈りで技ありを奪って優勢勝ちをした。準決勝は第1シードのリパルテリアニ(ジョージア)を大内刈りの優勢勝ちで破った。相手の強み、弱点を頭の中に入れ、自分の持ち味である「攻める気持ち」を貫いた。体もよく動いており、決勝への期待が大きく膨らんだ。
決勝には「(鈴木)桂治さんにみたいになりたい」と尊敬する鈴木・重量級コーチに背中に気合を入れてもらい、畳に上がった。
決戦の相手、チョ・グハム(韓国)は19年8月に東京で開催された世界選手権の準々決勝でゴールデンスコア(※延長戦)に入り、一本背負で技ありを取られて敗れている。そのリベンジを果たすように決勝のゴールデンスコアで借りを返した。そのことをチョ・グハムもわかっていたのだろう。「ウルフがしっかり準備してきた」とその強さを認め、今度は君がチャンピオンだとばかりウルフの右手を高々と上げた。
チョ・グハムの言うとおり、傾向を分析し対策を練ってきたことが勝利に結びついたが、ゴールデンスコアでの勝負もプラスに作用した。
17年の世界選手権で優勝した時、ゴールデンスコアで圧倒的な強さを見せたことで、それ以降、延長戦は「ウルフタイム」とも呼ばれた。だが、それが世界に浸透すると相手も研究してくる。