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走幅跳・橋岡優輝、“8m超え”連発の要因は助走? 跳躍種目で五輪メダル獲得となれば85年ぶり「最低限の目標に」
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto
posted2021/07/30 11:05
テスト大会で新国立競技場の雰囲気を味わった橋岡優輝。本番ではどんなジャンプを見せるか
走幅跳は助走・踏み切り・空中・着地という一連の局面から成り立つ。
大学入学時から磨いてきた助走は、年々着実にスピードがアップ。昨年4月に100mの自己記録を10秒53に更新し、1年以上経った現在はそれ以上に速くなっているという。
助走は最初のスタートから前半、中盤、そして後半から踏み切りの3つに分かれているが、とくに大学入学時から力を注いできた中盤の加速の勢いが増したことが成績につながっているようだ。そのスピードを踏み切りで地面の反力をうまく利用し、高く跳びあがっている。
3年前には空中での動作が反り跳びから左右の足を2回転半させるダブルシザースに変えた。正確に言うと、「変えた」のではなく「変わった」のだ。
2018年春先の試合中にその瞬間は突然やってきた。
「今、どう跳んだ?」(森長)
「分からないですね」(橋岡)
「今、シザースになっていたぞ」(森長)
「(足が)忙しかったから、そうかなとは思ったんですけど」(橋岡)
助走速度の上昇。最後までスピードに乗った状態で走り込みテンポがアップした分、足が回るようになったのではないかというのが2人の見立てだった。
その後、一旦反り跳びに戻したものの、絶対に跳ばなければいけないという局面になるほど、無意識のうちにシザースになっていた。
「これは無理に戻す必要がないんじゃないかなということになりましたね。無意識で自然に変わったということはそういう時期なのかもしれないし、長い目でみると、ここで変えたほうがいいのではないか、と」(森長)
しかし、急に跳び方が変わった反動で試行錯誤することも多かった。
「シザースは(踏み切りから)走り抜けるような感じになるので、踏み切り前後のタイミングが反り跳びよりもテンポが速くなる。彼はパッと浮き上がるような抜群の踏み切りのセンスをもっていますが、シザースではなかなか出せていませんでした。
ただ、19年のユニバーシアードで理想的なジャンプができて、それがずっと頭に残っていたようです。それを追い求めた結果、1試合に数本それに近い跳躍ができるようになりました」(森長)