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内田篤人も酒井高徳も認めた「日本サッカーと欧州サッカーの埋められない差」…欧州の日本人監督に聞く“どこが一番違う?”
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2021/07/27 17:01
2010~2017年までシャルケに在籍した内田篤人。CLベスト4を経験、写真は2017年の退団セレモニーで
「ドイツ語圏だと『ボールを奪う』のは攻撃という認識があるんですよ。受け身ではなく、アクションを起こして主体的にボールを奪いに行く。
特にオーストリアでは、2012年にラルフ・ラングニックがレッドブル・ザルツブルクのスポーツディレクターになってから、より激しくボールを奪うサッカーが定着しました」
日本のプレスは「お手洗いスタイル」
――日本はプレスに行って相手に近づいても、1メートルくらい前で止まってしまい、足を出さない印象があります。寄せるものの、相手を見てしまうというか。
「そこは大きな違いだと思います。日本の育成現場では『かわされるな』、『抜かれるな』という指示がよく飛ぶのではないでしょうか。
1メートル前あたりできゅっと止まってしまう守備は、レッドブルでは『お手洗いスタイル』と呼ばれているんですよ。洋式便器に座る姿勢に似ているので。せっかく距離を詰めたのに、なんで止まってしまうのかと怒鳴られます。
そこで止まっても、相手にとっては何の脅威でもない。スプリントでボールを奪いに行ったのだから、そのままボールを持っている選手に対して突っ込むべき。
ドイツ語では『reingehen』と言います。直訳すると『中に入って行け』、意訳すると『相手がボールを持っている空間に入って行け』という意味です」
――体が激しくぶつかってファールになることがあると思うんですが、チーム内の紅白戦で喧嘩にならない?
「全然OKです。それが日常ですから。戦術的な観点からも、万が一、第1プレスの選手がかわされたとしても、そこまで相手の空間に入ることができればボールコントロールが必ず乱れるので、第2プレス、第3プレスで奪いに行けばいい。
もちろんこれは国によって、クラブによって違うと思います。たとえばスウェーデンのリーグでは、4−4−2で引いてブロックを作って守るスタイルが一般的で、そこまで前線からプレスはかけない。
一方、ドイツやオーストリアでは、ラングニックのやり方が広まり、積極的かつ主体的なボール奪取が重視されている。
オーストリアは失ってもすぐに奪い返しに行くので、切り返しのフェーズの回数がすごく多いリーグ。奪い返しに行かない選手は悪い意味で目立ってしまいます」
Jリーグで“激しいプレス”を実行するのは難しい?
――モラスさんがヴィッセル神戸でコーチを務めたとき、ドイツ人のトルステン・フィンク監督が指揮を取っていました。ドイツ基準の強度を日本で実行するのは難しかった?