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マイアミの奇跡から25年…“主将”前園真聖47歳に聞く「日本と世界の差は縮まった?」「東京五輪でメダルの可能性は?」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2021/07/21 17:05
ブラジルを1-0で破った「マイアミの奇跡」は25年前の7月21日。写真は96年3月のアジア最終予選で28年ぶりの五輪出場を決めた際の1枚
「どうしてもアトランタを振り返るときにブラジルに勝ったことだけがクローズアップされますが、実は僕のなかでは第3戦のハンガリー戦が強く印象に残っているというか。グループリーグ突破のためには勝利が絶対に必要ななか、2度もリードされながら最後に3-2とひっくり返した試合です。結果的に得失点差で勝ち上がることはできなかったですが、僕が2点を取ったことを抜きにしても、ああいう試合をモノにできたことをもう少し話題にしてくれてもいいかなって。ブラジル戦のインパクトが強烈なのはわかりますが、それだけではなかったわけですから。
今回の東京五輪でも、もしかしたら同じような展開があるかもしれない。そんな苦しいときに、どう立て直せるかということはメダルを狙う上でも大事。もちろん、いまの選手の経験値は僕らとはまったく違うので、あまり比較しても意味はないかもしれませんが……」
この25年で日本と世界の差は縮まった?
前園はアトランタ五輪を通じ“世界を知った”ことで「このままでは追いつけない」「追いつくには(サッカーの本場欧州へ)海外移籍するしかない」と強く思ったと話す。残念ながら願った移籍は実現せず、そのことが少なからず前園のキャリアに影響を与えたのは否めない。だが、今回東京五輪に出場するメンバー22人のうち9人はすでに海外クラブに所属しており、そのほかにも今夏の移籍が決定している者もいる。あれから25年、日本と世界の距離はどのように変化してきたと感じているのだろうか。
「もちろん、日本サッカーが成長してきたのは間違いないです。ただ、世界も同じように進化しているわけで、その差は縮まったようで大きくは変わっていないというか。個々に結果を出している選手はいても、チームとして考えるとW杯でベスト8の壁は難しいまま。決勝トーナメントにはなんとなく行けるようになっても、そこから先が……。
そういう意味で、東京五輪は期待しています。来年にはカタールW杯もありますし、おそらく今回出場したなかからも多くの選手が選ばれるはず。もしメダルを獲るようなことがあれば、その勢いで一気に(W杯でベスト8以上に)行けるかもしれない」
「久保、堂安の代わりに出る選手が大事になる」
サッカー解説者としての前園は、今回の五輪代表をどう見ているのだろうか。
「経験値とか相手に見劣りしないという意味でもベストなメンバーな気がします。これまで難航するのが常だったオーバーエイジの招集についても、適材適所というかほぼパーフェクトと言えるんじゃないですか。僕らの頃はもちろん海外組は1人もいなかったですし、オーバーエイジについても“入れる入れない”の議論が先にありましたし、何がベストかもわかっていなかったですから。
海外組については、僕は10年以上前から五輪のあとに移籍するようでは遅いと思っていましたが、ようやくそうした流れになってきたというか。世界を見たら10代や20歳でクラブチームの中心になっている選手は少なくない。25年前は五輪を経験してから海外移籍というイメージがありましたが、現在の世界の物差しで考えれば、その前に世界を知っていないと勝負にならないですからね」
オーバーエイジにDF吉田麻也(32歳)、DF酒井宏樹(31歳)、MF遠藤航(28歳)と入り、守備は安定した。あとは久保建英、堂安律を中心とした攻撃陣が持っている力を発揮すれば、面白い戦いが期待できそうな気がする。前園は誰に注目しているのか。