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堂安律に「チームを背負う」役割を求め、「順調なときほど本大会で…」苦い経験を知る吉田麻也の“強いメッセージ”〈スペイン戦→五輪へ〉
posted2021/07/18 17:04
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Kyodo News
東京オリンピック前、最後のテストマッチは金メダル候補筆頭のスペインを相手に1-1の引き分けに終わった。
今はまだ本番前だから、結果についてことさら持ち上げるつもりはないが、内容に関しては大きな収穫があった。特に価値があったのは、前半30分すぎまでの戦い方だ。
攻撃の糸口をなかなか見出せず、ほとんど押し込まれっぱなし――。
しかし、だからこそ、意味があったのだ。
スペイン戦前半で試すことができたテーマ
6月シリーズでオーバーエイジの吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航の合流が早くも実現し、チーム力は格段にアップした。
もっとも、6月に対戦したガーナもジャマイカも、7月12日に対戦したホンジュラスも、「われわれが我慢強い守備を強いられることはなかった」と森保一監督が振り返ったように、本大会を占う"試金石"として物足りなかったのも事実だ。
苦しい時間帯をいかに凌ぎ、勝機を手繰り寄せるか――。
オーバーエイジが合流して以降、試す機会のなかったテーマを、まさに突きつけられたのがスペイン戦の前半だったのだ。
「彼らはサッカーを良く知っている。味方がどこにいるのか分かっているから、見なくてもワンタッチでボールを動かせる。ここに出せば味方がいるだろうとか、敵は来ていないだろうとか。そうしたサッカーのうまさ、賢さを感じた」
右サイドハーフとして先発した堂安律がそう振り返ったように、スペインは日本の布陣に生まれるスペースを巧みに利用してボールを動かし、ゴール前まで迫って来る。
立ち位置で相手よりも優位に立つポジショナルプレーのセオリーを誰もが理解しているから、ボールの動かし方にも、ポジション取りにも淀みがない。
それに対して日本は徹底したチャレンジ&カバーで応戦した。