Jをめぐる冒険BACK NUMBER
堂安律に「チームを背負う」役割を求め、「順調なときほど本大会で…」苦い経験を知る吉田麻也の“強いメッセージ”〈スペイン戦→五輪へ〉
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byKyodo News
posted2021/07/18 17:04
堂安律の先制ゴールを祝福する吉田麻也だが、その視線の鋭さに慢心は微塵も感じさせない
光った板倉の寄せ、久保と堂安で叩き込んだ先制弾
左センターバックの冨安健洋が前にアタックすれば、すかさず吉田と酒井が左に絞ってカバーする。
また、ボランチに入った板倉滉の寄せの速さや鋭さも光った。
この日は先発のチャンスを得たが、板倉はオーバーエイジの合流によってレギュラーから弾かれた選手のひとり。「このゲームは僕にとってすごく重要な試合だった」と明かしたように、プレーからはこの試合に懸ける強い気持ちが伝わってきた。
押し込まれながらも決定的なチャンスを与えず、粘り強く凌いでいた日本にゲームの流れが傾き始めるのは、給水タイムを挟んで前半のラスト15分だ。
スペインのペースが少し落ち、日本が相馬勇紀、旗手怜央の左サイドを中心にチャンスを作れるようになっていく。
そして42分、久保建英の突破から堂安が先制ゴールを叩き込むのだ。
「相手のコンディションが良かったら……」と話した吉田
「(インサイドハーフの)10番(マルコ・アセンシオ)、8番(ミケル・メリノ)があそこで受けて前を向くとかなり脅威だと思っていたので、センターバックが注視する。もしくはボランチを使いながらマークを受け渡すことを意識していた。それでも何度か受けられて前を向かれたけれど、慌てずに対応できたかなと。
前半に関してはいい時間帯も、苦しい時間帯もありましたけど、総じてうまく守れたなと。相手のストロングポイントをうまく消しながらやれたと思います。ただ、プレスの掻い潜り方は非常に巧みだと思いました。相手のコンディションが良かったら、もっと難しい試合になったのではないかと思います」
そう振り返ったのは、吉田である。本大会でも、グループステージでの対戦が決まっているメキシコやフランス、決勝トーナメントで顔を合わせる可能性があるブラジル、ドイツ、アルゼンチンとの試合では、この日と同じように押し込まれる時間が長くなるはずだ。
だが、舞台は夜であろうと高温多湿の真夏の日本。強豪と目される彼らであっても90分間、主導権を握り続けるのは難しい。
苦しい時間帯をいかに凌ぎ、勝機を手繰り寄せられるかどうか――。
まさに、先述したテーマに対する回答を、スペイン戦の前半に出したのだった。