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「競走はいわば決闘だ」最速のFWムバッペが語る“スピード”「若いころは相手を置き去りにする楽しさがあったが…」

posted2021/07/11 17:01

 
「競走はいわば決闘だ」最速のFWムバッペが語る“スピード”「若いころは相手を置き去りにする楽しさがあったが…」<Number Web> photograph by L’Équipe

2018年W杯では19歳183日での最年少得点を記録するなど、縦横無尽の活躍でフランスを優勝に導いた

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パスカル・フェレ

パスカル・フェレPascal Ferre

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 『フランス・フットボール』誌がこの6月から月刊化した。1946年1月8日の創刊以来、週刊誌として3905号を刊行(1997~2013年は週2回発売)してきたFF誌も、出版業界を巡る昨今の状況には抗えず、歴史的な決断を迫られたのだった。

 月刊化第1号の内容は充実している。ディディエ・デシャンによる自戦解説(ロシアW杯ラウンド16、対アルゼンチン戦)やブエノスアイレス、北マケドニアのルポルタージュ、ジャンニ・リベラへのインタビュー、バロンドール秘話……。なかでも目玉として掲載されたのが、キリアン・ムバッペのロングインタビューである。テーマはスピード。世界最高のスピードスターであるムバッペが、あらゆる形態のスピードと自らの関係を、パスカル・フェレ編集局長に語っている。まずはその前編から(全2回の1回目/#2に続く・肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)。

(田村修一)

――子供のころはネコ科動物が大好きで、動物のドキュメンタリーをよく見ていたというのは本当ですか?

「たしかに大好きだったけど、それは他の子供も変わらないだろう。動物たちがどんな動きをするのか、突然走り出す様子は何時間見ていても飽きなかったし、彼らが素早く走る姿に憧れた。獲物を驚かせる予測不能な動きに僕は魅せられた。僕が人を驚かせたいと思うようになったのも、彼らの影響かもしれない。甥っ子が動物番組を見ている姿を見ると、自分の子供時代を思い出すよ」

スピードスターたちとの交流

――小さなころからスピードに魅了されていたと。

「(遊園地の)アトラクションも大好きだったし、スピードの世界と特別な関係があったのは間違いなかった。そこで得られる感覚に僕は惹かれた。たとえば自動車がそうであるように」

――免許は持っていませんが……。

「今、教習を受けているところだ。でも、仕事が忙しいからなかなか時間がとれない。取得するまでの間、スピードの感覚を得るためにサーキットに通おうかと思ったよ。ファビオ・クアルタラロやピエール・ガスリー、マックス・フェルスタッペンといったドライバーたちとも知り合って、超高速に達したときに彼らが得る感覚について話を聞いた」

――陸上のスプリンターにも魅せられましたか?

「オリンピックでウサイン・ボルトが世界記録を出す瞬間を、真夜中まで起きて見ていた。彼はスプリンター枠を超えた、偶像的なショーマンだ。見るものに夢を与えた。だが、そうしたスペクタクル以前に、彼にはしなやかなストライドがある。彼と同じようには僕は絶対に走れない」

【次ページ】 スピードは才能のみにあらず

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キリアン・ムバッペ
パリ・サンジェルマン

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