フランス・フットボール通信BACK NUMBER
生後18カ月で最初のスプリント、学業でも小学3年で飛び級…ムバッペが語る半生「早熟は苦痛でしかなかった」
text by
パスカル・フェレPascal Ferre
photograph byL’Équipe
posted2021/07/11 17:02
今季限りのPSG退団が噂されるムバッペ。実績も存在感も抜群だ
――いつ頃まで苦しみは続きましたか?
「16歳ぐらいまで続いた。そのころからさまざまな疑問に対する答えが得られるようになった。周囲のせいにするだけでなく、自分自身も努力しなければならないと思った。モナコでプロデビューして、大人と接する機会が増えたのも良かった。直ちに大人になることを求められた。早熟な子供の人生は加速化しているから孤独を感じることもなく、むしろ水を得た魚のようだった。すべてが瞬く間に起こり、それこそ僕が望んだことでもあった。モナコが僕のためにあらゆるサポートをしてくれたのを僕は決して忘れない。彼らは僕をよく理解し、よく理解していることを僕に伝えた。そんな環境でプレーができたから、僕は頭角を現すことができた」
――サポートがなければ、うまくいっていなかったでしょうか?
「その通りで、モナコの家族的な雰囲気の中で寛げたから、僕は上昇していくことができた」
生後18カ月めのスプリント
――あなたは8カ月で歩きはじめて、18カ月で最初のスプリントをしたそうですが、スピードへの希求はずっとあったのでしょうか?
「既存のスタンダードを超えてより速く、より高くという気持ちは常にあった。サッカーだけに限らない。今は能力を隠そうとはせずに、自分で認めている。それが僕の力であるからだ。僕は歴史を作りたい。それもできるだけ早く」
――速く走りたいという思いは、いったい何を隠したのですか?
「特別なものになりたい、高い評判を得たいという執着だ。すごく小さなときから、僕は歴史の本に名を残したいと思っていた。その激しい思いをずっと抱いていた。人々を驚かせたいと渇望していたし、自分自身をも驚かせたかったのだろうと思う」
――スピードのない人生は味気ないですか?
「それは領域による。ときにゆっくり寛ぐほうがいいときもある。たとえばバカンスの間は、全力で誰かが走るのを見たいとは思わない。でもすぐにスピードが恋しくなるのもわかっている。幼いころからスピードに慣れ親しんでいて、常に寄り添っていたからだ」
――人生はひとつの競走といえますか?
「ああ、自分との競走だね」