フランス・フットボール通信BACK NUMBER
生後18カ月で最初のスプリント、学業でも小学3年で飛び級…ムバッペが語る半生「早熟は苦痛でしかなかった」
text by
パスカル・フェレPascal Ferre
photograph byL’Équipe
posted2021/07/11 17:02
今季限りのPSG退団が噂されるムバッペ。実績も存在感も抜群だ
――あなたは常にぎりぎりのところにいます。短気で気ぜわしいのもそのせいでしょうか?
「僕はとても大きなプレッシャーを受けている。そうであるからこそ、敗北を許容できない隔絶したコンペティターであるのかもしれない。可能な限りすべての勝利を得たいし、『他人のためにここは譲ろう』とは絶対に言いたくない。すべてを今、勝ち取りたい。ときにそれが過大な要求であるにせよ……。
ただ、いら立ちを隠す術も知るべきだと思う。心を禅の状態(平常心のこと)に保ちリラックスする。本当に自分が望むものを除いて、あまりものごとに執着しすぎない……」
――それほどのプレッシャーがあるならば、どうして将来の決定に時間をかけているのでしょうか?
「それは……。急いで決める必要がないからだ(微笑)。正しい決断をするのは簡単じゃない。最大限のチャンスを得られる決断を……。今の状況には満足しているし心地よさも感じている。でもここが本当に僕にとって最高の場所なのか。答えはまだ出ていない」
――クラブはあなたにじっくり考える時間を与えていますか?
「理解は得ている。問題は何もない。僕もバカじゃない。僕が加わったプロジェクトと加わらないプロジェクトでは、クラブにとって同じでないことはよくわかっている。クラブも僕が何を求めているかを理解している。クラブの利益を僕が損なうつもりはないことを、彼らも分かっている。偉大な選手とは、ピッチの外でも立派に振舞うことができる人物だ」
迫る決断のとき
――決断はいつごろになりそうですか?
「すこし時間はかかるかも知れない。でもそれは時間稼ぎではなくて、じっくり考えて正しい決断をするための時間だ」
――同じように時間をかけたのはいつ以来ですか?
「PSGと契約をした2017年の夏以来だ。あのときはメルカートが締め切られる8月31日までかかった」
――同じことが今回も起こるという前兆ですか?
「違う(爆笑)。ひとつ理解して欲しいのは、この決断は僕にとって衝撃ではないことだ。それほどの重みはない。もちろん有益な決断だが、これまでとは異なるのはそれが注目を浴びていることだ。それもまた悪くはないと思っている。僕がどう決断するかが話題になっても、試合の日が来れば僕の将来よりもパフォーマンスについて語られる。そういう存在でありたいね」
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