フランス・フットボール通信BACK NUMBER
生後18カ月で最初のスプリント、学業でも小学3年で飛び級…ムバッペが語る半生「早熟は苦痛でしかなかった」
text by
パスカル・フェレPascal Ferre
photograph byL’Équipe
posted2021/07/11 17:02
今季限りのPSG退団が噂されるムバッペ。実績も存在感も抜群だ
――ある人物がこう言いました。「スピードとヴィジョンが混同されている。自分は速いという選手は大勢いる。私はそうではないが、走り始めるのは誰よりも早く、自分の能力以上に速い印象を与えた」と。
「僕もそれはよくわかる。誰が言ったのかな?」
――ヨハン・クライフです。
「それなら納得できる。今日の言葉ではなくとも、真理をよく言い当てている。プレーをよく知る選手は、理解度の低い選手より常に早くプレーする。今日のように、プレーがどんどん高速化しているときはなおさらだ。ただ、中心はあくまでプレーで、スピードはプレーのための手段だ」
――いつかあなたも他の選手よりスピードが遅くなる日が来ると思いますか?
「今からその準備をしている。たぶん思ったより早くその日が来るだろう。とりわけポテンシャルを大きく損なう負傷をした後では。僕はまだ22歳だけど、そのことを考え始めているし、スピードだけに頼らないように、他の能力を高めようとしているところだ」
スピードに頼らずプレーする方法
――スピードで相手を振り切れないときが来るのを想像するのは怖くないですか?
「それは違う。そのときはちがったやり方でプレーする。クリスティアーノ・ロナウドを見ればわかる。脚が衰えつつあることを彼はほとんど感じさせない。それはしばらく前から、彼がプレーの幅を広げたからだ。リオネル・メッシも同じだ」
――スピードのないムバッペというのもありですか?
「もちろんだ。あと7~8年もすれば、僕もサッカーの奥深さを理解して経験も積むだろう。ディフェンダーを苦しめ続けた後でも、彼らに恐れを抱かせる存在でありたい。相手が恐れれば、こちらにはそれだけ時間ができる。
――時間を得ることに執着していますか?
「僕は自分の時間を失いたくない。僕は他の選手より速いから、時間の流れも人とは異なり、常に自分自身の時間を作り出している。特別な時空間を作り出す方法を僕は学んだけど、それはチームから孤立したものではない」
――あなたにとって自分の時間とは何ですか?