ラグビーPRESSBACK NUMBER

「後任は神鳥しかいない」明治ラグビーが新章に突入…新監督が追及する“BIG”、継承されるオフ・ザ・ピッチの態度とは? 

text by

多羅正崇

多羅正崇Masataka Tara

PROFILE

photograph byMeiji University

posted2021/07/09 17:02

「後任は神鳥しかいない」明治ラグビーが新章に突入…新監督が追及する“BIG”、継承されるオフ・ザ・ピッチの態度とは?<Number Web> photograph by Meiji University

明大ラグビー部監督の就任会見で力強く抱負を語る神鳥裕之監督。現役時代はNo.8として大学日本一も経験している

 真面目にラグビーができる象徴的な選手がいる。副将のNo.8大石康太だ。

 3年生まで公式戦出場はなかった。しかし日常生活での態度、リーダーシップが支持されて副将に選出。ポジションは新監督の現役時代と同じNo.8だ。

 大石副将は公式戦に出場できなかった3年間も、ひたむきにオフ・ザ・ピッチで規律を重んじてきた。

「たとえばトイレのスリッパを並べたり、食堂の炊飯器を次の人が気持ちよく使えるようにきれいに使ったり。誰でもできることを普通にやっているだけなので、ちゃんとしているという感覚はないです。ただ、人のためにできることをやろう、ということは常に考えてきました」(大石副将)

 オフ・ザ・ピッチから地力をつけた大石副将の記念すべき公式戦初スタメンは、神鳥新監督の初陣だった。全3戦の関東大学春季大会のラストマッチ、6月6日の東海大学戦だ。

 公式戦で初めて背番号8を背負った大石副将は、倒れてはすぐに起き上がり、アタックでは率先してクイックスタートで突進。驚異的な18回のボールキャリーを記録し、終盤の劇的な同点トライを含む2トライを奪い、28-26の逆転劇に貢献した。

「後半に逆転した東海大学戦では、取り組んできたきついフィットネス練習の成果が出ました」(大石副将)

 春季大会は3戦全勝。その後の2つの招待試合では、帝京大学にこそ敗戦したが、昨季の大学選手権準決勝で敗れた天理大学には雪辱を果たした。

 田中前監督が「僕よりもやりたいことを相談しやすいのでは」と語ったように、神鳥監督は柔和な人柄、高いコミュニケーション能力でも知られる。自身も「自分の強みは学生、スタッフと対話をしながら一緒にチームを創り上げていく部分」と自己分析する。

 対話のしやすさは選手の声からも感じ取れる。

 大石副将は監督との個人面談を「予定の10分では終わらず40分くらい喋ってしまいました」と楽しげに回想した。日常的に会話している飯沼主将も「本当に優しい方で、話しやすいです。コーチに対する意見があればどんどん話してほしいとも言われています」と語る。

 田中前監督は明大のさらなる進化の方向性として、「部として主体的になることが必要では」と語っていた。対話重視の神鳥監督であれば、選手たちも主体性を発揮しやすいだろう。

「常に優勝争いをし続けたい」

 67年にわたり指揮した北島忠治“御大“が死去した96年シーズン、喪章代わりの黒襟ジャージを身につけて最多12回目の優勝(当時)を味わった背番号8が、4年生の神鳥裕之だった。その時の背番号9が3年生スクラムハーフの田中澄憲であり、背番号10は現在の明大ヘッドコーチである3年生のSO伊藤宏明だった。

 旧国立競技場での大学日本一を知る新監督は、就任記者会見で、意気込みをこう語った。

「常に優勝争いをし続けたい。そこは一番大事な部分として掲げていると同時に、在任期間中にかならず優勝する、という強い気持ちをもって、学生たちと日々努力をしていきたいです」

 新たなチャプターに突入したメイジは、18年度以来の14回目の優勝を飾り、紫紺のプライドをもう一度満天下に示せるか。

関連記事

BACK 1 2 3 4
明治大学
神鳥裕之
田中澄憲
飯沼蓮
大石康太

ラグビーの前後の記事

ページトップ