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【ラグビー】ジェイミージャパンの欧州遠征で感じた“経験値の尊さ”…テストマッチの敗戦は「度外視」か、「もったいない」か
posted2021/07/08 06:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
JRFU
2019年のラグビーW杯の熱狂から1年半が過ぎ、コロナ禍を経て、日本代表のキャンペーンがリスタートしたことを喜びたい。
今回のサマーツアーでは、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズに10対28、アイルランドには31対39で敗れたものの、新戦力も台頭したことで、一定の評価が与えられる遠征となった。
すでに帰国し、隔離生活を余儀なくされている日本代表の藤井雄一郎チームディレクターは、ツアーを振り返るリモート会見で、「チームは尻上がりに良くなり、良い方向に向かっている」と手応えを感じる一方で、ツアー中の予期せぬ待遇に真情を吐露した。
「スコットランドでは、ライオンズとの試合を前に、ポールもない、オールブラックスなら絶対にやらないような練習場所に連れていかれました」
と実情を明かし、
「サインプレーはバレてました。完全に丸裸にされていましたね。ライオンズとして、絶対に負けられないという気持ちが強かったんだと思いますが、今後、協会が交渉しながらやっていかないと、アウェイではストレスしかなくなってしまいます」
W杯で8強に進出したとはいえ、まだまだリスペクトを得ておらず、「ティア2」扱いのままだ。日本ではいくら「おもてなし」をしたとしても、ホームユニオンの国に遠征すれば、ホスピタリティは期待できないというわけだ。
もう少し欲しい“新戦力の台頭”
2023年フランスW杯に向け、個人的に注目しているのは、「新戦力の台頭」と、「選手層の構築」である。このふたつの要素はリンクしており、首脳陣のプランから目が離せない。
6月12日のサンウルブズ戦におけるスタメンの平均年齢は30歳を超えていたが、アイルランド戦ではSHに齋藤直人(23歳)が先発で起用され、姫野和樹が試合直前に離脱したことによってリザーブのテビタ・タタフ(25歳)がNo.8に入り、平均年齢は28.4歳となった。
ちょうど4年前のアイルランドとのテストマッチでは、平均年齢が26歳台だったことを考えると、もう少し新戦力の台頭が欲しい。
前回の2019年W杯に向けては、サンウルブズが若手の力試しの場となっていた。しかし、今回はそれがない。数少ないテストマッチを有効活用していくことが求められる。