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リターンの名手・錦織圭 3年前のウィンブルドン“過去最高の試合”「本気でやれば優勝候補の相手に勝てた」
posted2021/07/01 17:00
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph by
Hiromasa Mano
錦織圭がグランドスラム(四大大会)通算100勝目を挙げた。ウィンブルドンの1回戦で、オーストラリア期待の21歳、アレクセイ・ポピリンを3セット連取で下した。
あえて「強烈なリターン」を選ばなかった
相手はビッグサーバー、したがって、試合の焦点は錦織のリターンにあった。序盤からそのリターンが相手コートの深い所に落ちた。小さな振り幅で弾道はやや高め、深さ最優先で、しっかり確実にコートに収めた。深いうえに、球足の速い芝コートだからバウンド後にボールが伸びる。そのため、ポピリンは十分に構えて打つことができず、粗さが目立った。
サーブからの“3球目攻撃”を防ぎ、ラリー戦に持ち込むために、錦織が選んだ最善手がこのリターンだ。これが計3度のサービスブレークにつながった。錦織は「何回か深く、真ん中でも深く入って、そこからポイントの組み立てがうまくできた。相手のサーブはよかったが、大事なところでリターンをしっかり沈めてプレーできた」と振り返った。
もともとリターンの名手だが、厳しいコースをつく強烈なリターンではなく、このハーフスピードのショットを軸にしたのは経験のたまものだろう。ビッグサーバーを完封したこの試合から、100勝の経験や蓄積の重みを読み取るのは難しいことではない。
ウィンブルドンでは何度も「楽しい試合ではなかった」
以前の錦織はビッグサーバーを苦手にしていた。
サーブが入るか入らないか、相手次第でポイントが推移する。だから、自分のリズムで試合を進められない。創意工夫は得意だが、どうやってもそれが通用しない場面が増える。集中すればするほど、落胆も大きく、フラストレーションがたまる。走って拾ってようやく1ポイントを奪っても、相手はパッカーンとサービスエースを決め、どちらも同じ1ポイントなのだ。