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「渋野日向子さんと松山英樹さんで取り上げ方が違いますよね」 女性アスリートを“アスリートとして見ない”国内メディアの問題
posted2021/06/25 17:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Sachiko Horasawa
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会のジェンダー平等推進チームのアドバイザーに就任、勉強会を立ち上げるなど尽力する井本直歩子は語る。
「ジェンダー平等のために、メディアの役割はものすごく大きいと思っています」
1996年のアトランタ五輪に出場するなど競泳選手として活躍。2000年に競技生活から退いたあと、JICA(国際協力機構)でガーナ、ルワンダなどで活動し、その後国連児童基金(ユニセフ)の職員として各国で任務にあたった。休職して今年1月に帰国すると、スポーツ界でのジェンダー平等推進のための活動に携わり始めた。
その中で感じるのがメディアの影響だ。
「渋野日向子さんと松山英樹さんで取り上げ方が異なる」
「『男はこうあるべき、女はこうあるべき』のイメージ、ビジネスマンや、ママの像とか、CMやテレビ番組でくっきりと描かれている。生活の隅々、頭の隅々までこびりついている。コメンテーターの話でも感じます」
スポーツにおいても痛感する。
「女性アスリートは、あまりにも競技性と違うところが注目されがちですよね。もちろん、きちんと伝えようとしている人はたくさんいると思います。でも男女を同じように報道していないメディアも多いですよね」
そう言って例をあげる。
「(ゴルフの)渋野日向子さんと松山英樹さんで取り上げ方が異なりますよね。松山さんの私生活やルックスのことは誰も言わない、取り上げないじゃないですか。でも渋野さんについてはお菓子を食べていることだとかスマイルのことが数多く取り上げられます」
一例にはとどまらない。
「特にウィンタースポーツだと、競技の理解、知識が低い面があるから、競技性ではないところばかりを取り上げがちになっています。(カーリング女子代表の)『もぐもぐタイム』とかそればかりやっていましたよね」