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「藤浪晋太郎は大丈夫でしょうか?」「最後はやっぱり本人」矢野燿大監督(阪神)がインタビューで厳しくなった瞬間 

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金子達仁

金子達仁Tatsuhito Kaneko

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photograph byHiroshi Nakamura

posted2021/06/18 17:02

「藤浪晋太郎は大丈夫でしょうか?」「最後はやっぱり本人」矢野燿大監督(阪神)がインタビューで厳しくなった瞬間<Number Web> photograph by Hiroshi Nakamura

2019年シーズンから阪神を率いる矢野燿大監督(52歳)

 だが、スアレスは踏みとどまった。1点差になって迎えた2死1塁、代打エチェバリアの打球は近本光司のグラブに収まった。

 チームは、江越は、救われた。

 矢野の考えがチームに染みつつあるのは間違いない。だが、まだ完成形にはほど遠く、目指すところにたどりつくまでは、これからも多くの手痛い失敗が待ち受けていることだろう。

 それでも、そうしたことすべて受け入れる覚悟と準備が、矢野にはある。

 そして、落とせば大変なことになりかねない分水嶺を上手く乗り切る力、乗り切ろうとする意志が、今年の阪神には根付き始めている。

中南米の助っ人は「フォアボールを選べない」

 大阪スポニチの重鎮、内田雅也編集委員が連載しているコラム『追球』によると、中南米の野球界には「歩いて海は渡れない」という言葉があるそうだ。

 海を渡りたければ、つまりメジャーリーグでのプレーを望むのであれば、打たなければならない。いくらフォアボールを重ねても、アメリカ行きにはつながらない。カリブ海を歩いては渡れないように──ということらしい。

 本来、プロ野球における球団と選手の関係、特に外国人選手との関係は、いたってドライものであることが多い。打てば、残れる。抑えれば、残れる。数字を残せば、残れる。

 だが、多くの日本人がシングルヒットと変わらない価値を見出しているフォアボールという結果に対し、中南米の選手たちはまったく違った受け止め方をしている。なぜ彼らは、見逃せばボールになることが確実な外角低めのスライダーに、面白いほどひっかかるのか。

 フォアボール=シングルヒット、ではなく、フォアボール=三振に寄った価値観が根底にあるのだとすれば、なるほど、納得がいく。

 今年で3年目を迎えるマルテも、来日当初は典型的な中南米から来た助っ人だった。

矢野監督「うわ、マルちゃん走ったんか」

 だが、今年は違う。彼は、歩く。フォアボール=シングルヒットという価値観を持っているとしか思えない様で、歩く。

【次ページ】 矢野監督「うわ、マルちゃん走ったんか」

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