野球のぼせもんBACK NUMBER
ホークスの36歳ベテラン打撃職人・長谷川勇也が語った“極意”「スタメンと代打では何が一番違うか?」
posted2021/06/18 17:15
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
KYODO
必殺仕事人のイントロに、刀の効果音。そして桜吹雪の中に「打撃一閃」の4文字が巨大ビジョンに映し出される。
そんな特殊演出に乗って、長谷川勇也はPayPayドームの打席に向かう。
これでもか、というほどクサ過ぎる。いや、他の選手ならばそんな風に感じるかもしれないが、こと長谷川に関しては違和感がない。寧ろ惚れ惚れするくらいキマっている。
打席で見せる鋭い目つき。バットを構える所作にも隙は見当たらない。
近年は代打稼業が多い長谷川だが、5月29日の巨人戦では11試合ぶり今季5度目のスタメンに「5番レフト」で名を連ねた。
大きな仕事をやってのけた。チーム本塁打1試合5発のド派手な試合を演じた中で主役を張ったのは、間違いなくこの36歳のベテラン打者だった。巨人に初回2点先制されて迎えた2回、4番柳田悠岐のソロで1点差に迫ったところでこの日最初の打席が回ってきた。「ギータ(柳田)の本塁打で勢いのあるまま打席に入れました」。巨人・サンチェスの甘めのスプリットを強く振り抜いた打球は右中間のホームランテラス席へ飛び込んでいった。鮮やかな今季1号同点ソロになった。
これで主導権を引き寄せてその後4-2とリードを奪うと、5回には走者2人を置いて打席が回ってきた。今度はサンチェスのカットボールを捉えると、またも打球は右中間テラス席へ一直線に伸びていった。自身約3年ぶりとなる1試合2本塁打。この2発4打点で試合の大勢を決定づけた。
36歳打撃職人「スタメンと代打では何が違うか?」
「甘く入ったカットボールを仕留めることができました。いい集中力を出せたと思います」
集中力という言葉が、いかにも長谷川らしい。この日、スタメン出場を告げられたのは試合前練習でバッティングの順番が回ってくる前だった。だからといって気持ちも準備も変化はない。
「僕はいつも通りやるだけですから」
とはいえ、いざ試合になればスタメンと代打では全く違う。特に打席での心構えが変わってくるという。