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女子プロレス団体スターダムはなぜ“世界トップ規模で”成功している? 「プロレスって思い入れで成り立つものですから」
posted2021/06/20 11:00
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
どんな競技でも、無観客試合を取材するとやはり寂しい。10年に1度、あるいはそれ以下の確率で偶発的に発生したレアケースならば特殊な状況にテンションが上がることもあるだろうが、それが当たり前のこととして受け入れられるようになってしまっている今、改めてスポーツにおける観客の存在の大切さというものを感じる。
そもそもプロスポーツにおいて、会場を埋める観客の存在というのは欠かせない、いわば動力源のようなものだ。
放映権料やスポンサー料、マーチャンダイズ、あるいは独自のネット配信チャンネルに加入している世界中の有料会員による収入よりもゲート収入の割合が少ないケースも珍しくないが、それらの金額が大きくなっていくのはそもそもそのコンテンツの人気があるからだ。観客の数は人気のわかりやすいバロメーターであるし、その場が盛り上がっていれば人気のあるコンテンツに見えやすいという相互関係でもある。
それに、観客は選手の力を引き出す存在でもある。観客の存在、あるいは数とホームアドバンテージとの相関の有無については諸説あるが、見られることで選手のパフォーマンスに影響が生じる観客効果(観衆効果、audience effect)というものがプラス(促進)マイナス(抑制)どちらにも働くものとして確かに存在する、という点は一致している。ちなみに、持久型の競技やチームスポーツ、見られることを前提としたスポーツでは、その選手の能力が高いほどプラスに働きやすい。
経営面でも選手のパフォーマンス面でも、観客の存在はそのコンテンツの魅力を高めるための大きな要素になっている、と言うことができる。
魅力が高まれば規模が大きくなっていく。規模が大きくなればそこを目指す競技者も増え、レベルがますます高まっていく。
だから様々な競技シーンで、観客・ファンをどう増やしていくか、ということは永遠の課題だ。
現在も勢いを増しているスターダム
今回は、こういう状況の中でも勢いを増している女子プロレス団体スターダムのエグゼクティブプロデューサー、ロッシー小川さんにお話をうかがい、大きくなっていくためにどんなことが大切なのかを学んでいく。
スターダムのビッグマッチは後楽園ホールで開催されることが多かったが、ここ1、2年で横浜武道館、仙台サンプラザホール、エディオンアリーナ大阪第1競技場、大田区総合体育館など、より大きな会場を使うようになった。今年の3月には日本武道館大会を成功させ、所属選手数でも女子プロレス団体として世界トップの規模になっている。
まずは現在の勢いの中身について尋ねてみた。
——大きな会場で毎月のようにビッグマッチを開催できるというのは、それだけ新しいファンが増えたということでしょうか?