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女子プロレス団体スターダムはなぜ“世界トップ規模で”成功している? 「プロレスって思い入れで成り立つものですから」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/06/20 11:00
スターダムの白いベルトのチャンピオン、中野たむ
しかし、いくら男性にそういう面があったとしても、大前提として試合や選手が魅力的なものでなければそうはならないだろう。その部分を考えていくと、大切にしていることが見えてくる。
「ビューティ・ペアにしてもクラッシュギャルズにしても、ほとんど毎日テレビに出て、毎日見ていれば人気があるように感じますよ」
多く露出していることで、人気があるものに見える。それは時代に関係ないことだ。
「選手は輝いているスターとして憧れさせないと」
「昔だったら地上波のテレビに出ることが一番でしたけど、今はメディアも広がってしまって、ここに出れば絶対、というものがなくなりつつあるじゃないですか。だから色んなところにアンテナを張りながら露出し続けることが大事だと思いますよ」
そして、それは完全な新規の層だけではなく、プロレスファンに対するアピール、さらには既にスターダムのお客さんになっているファンにとってのアピールとして欠かせないことだ。
大きな会場で試合を行うことにもその効果がある。
「メジャー感は大事だと思いますね。身内の感じではなく、選手は輝いているスターとして憧れさせないと。大きい会場でやるとスターに見えるんですよ」
会場の大きさでも露出の多さでも「自分の好きなものはこんな場所で多くの人に見られるようになるほど良いものなのだ」「こんなにたくさんの人を集めるようになったものを自分は選んで応援してきたのだ」そんな気持ちになることは、その世界そのものへの愛情を深めることに繋がる。優越感というのは、興味のある人や既にファンになっている人とその世界の関わりを深めさせる重要なものになる。
一時離れた人が再び会場に足を運ぶようになるのも、一度辞めた選手が戻ってきたり、新しい推しの選手が見つかったり、ビッグマッチがあったり……と様々な理由がある。重要なのは、そうやって再び興味を持つきっかけがあるかどうかだ。
これは過去に全く興味を持ったことがなかった人が足を運ぶようになるのと重なる。自分の世界の中にないものに、主体的にアクセスする人はいない。だからこそ様々な形で露出をし続けて、ふと目に留まる機会が生まれることが重要なのだ。
「興味を持つことと会場に来ることはかなり違いがあって、やっぱりお金を払って会場に来る、というところにはハードルがあると思うんですよ。そのハードルを一回乗り越えると、常連になってくれる」
プロレスファンは、わざわざプロレスを見るためにチケットを買い、会場に足を運ぶ、というその高いハードルを既に越えている存在なのだから、その人たちが自分たちの会場に足を運んでくれるようになる方が遥かに現実的な話だ。プロレスファンの数自体は東京ドームを埋められるよりもずっと多くいる。
「プロレスファンがそのままスターダムのファンになってくれることが一番早いですよね」