格闘技PRESSBACK NUMBER
女子プロレス団体スターダムはなぜ“世界トップ規模で”成功している? 「プロレスって思い入れで成り立つものですから」
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/06/20 11:00
スターダムの白いベルトのチャンピオン、中野たむ
女子プロレスにもブームがあった
しかし、かつてプロレスファンではない層が会場に押し寄せたこともある。女子プロレスではビューティ・ペア(1976~79)やクラッシュギャルズ(1984・85)が人気となり、いわゆるブームというものがあった。
小川さんは1978年に全日本女子プロレスの広報になると、ビューティ・ペアの担当を務め、その後はクラッシュギャルズのマネージャーとしてブーム真っ只中を過ごした。
——あの頃は黄色い歓声が凄かったんですよね?
「女の子、ほとんど女子中高生ですね。(選手の)女の子なんだけど男っぽい、というところが格好良かったんじゃないですかね。恋愛までいかない時期に男性的な憧れを持ったような」
——そうなると、年齢が上がるとともに自然と離れていく、という感じですか?
「それもありますけど、その選手がいなくなってしまえばいなくなりますよ」
——会場に来ているうちにプロレスそのもののファンにはならないんですか?
「中にはいたでしょうけど、ほぼならないですね。その選手が好きなので」
——そうなると、会場はどういう感じだったんでしょうか?
「いや、来てる人はどの試合も沸いてましたよ」
それは今でも変わらないことだ。会場に来ているということは、大切なお金を払い、時間を消費しているわけだから、推しの選手が出ている時以外でも存分に楽しまなければもったいない。Tシャツを着て応援している選手以外でも積極的に盛り上がり、楽しむ。
「目当ての選手が出なくなったらもう来ない」
「ブームって、今からすれば信じられないことが起こるんですよ。満員で当たり前だし、事務所の駐車場にファンが毎日200人くらい来たり。今と違って試合以外の情報が無いですから、事務所に行けば会えるかもしれない、と。凄かったですよ」
そこまで熱心なファンであってもやはりいなくなってしまうという。
「団体としては次の選手も売り出すんですよ。でも目当ての選手が出なくなったらもう来ない」
スターダムは選手の入れ替わりが激しい方だ。宝城カイリや紫雷イオといったトップ選手がWWEに移籍もした。しかし、それによって過去のブームの時のように観客が一気に引いてしまったということはない。先述の通り、大会場に挑戦できるだけのファンの確保ができている。
それはなぜなのだろうか。小川さんは、観客の違いを理由に挙げている。
「多分男女の差はあると思うんですけどね。女性のファンってあっちもこっちも好きにはならない傾向があります。一途なところがあって。人につくって感じですね。男性のファンは、好きな人が同時に5人くらいいる人も多いんですよ(笑)」
だから好きな選手が1人いなくなったとしても、まだ好きな選手がそこにいるし、そのうちまた新しい選手を好きになる。