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朱里が大号泣、林下詩美は放心状態に… スターダム“赤いベルト”をかけたベストバウトと選手たちが味わった挫折

posted2021/06/18 11:03

 
朱里が大号泣、林下詩美は放心状態に… スターダム“赤いベルト”をかけたベストバウトと選手たちが味わった挫折<Number Web> photograph by Essei Hara

朱里(右)と林下詩美はスターダムの“赤いベルト”ワールド王座戦で大激闘を繰り広げた

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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Essei Hara

 スターダムは業界最大手の女子プロレス団体である。一昨年、新日本プロレスと同じブシロードの傘下となってからは広告、広報が一気に充実。たとえば山手線内の33駅に大型ポスターを掲出、レギュラー番組も放送されている。

 3月に初の日本武道館大会を成功させただけでなく、ビッグマッチを何度も開催している。大都市以外にもさまざまな土地に進出。興行数と規模は男子も含め日本トップクラスだ。

 当然、所属レスラーたちの人気も高い。選手に聞くと、SNSの反応も全国各地、海外、そして老若男女から届くという。

 ただ、彼女たちは決してエリートではない。他団体からの移籍組をはじめ、紆余曲折あってこのリングで輝くようになった選手が多いのだ。

 6月12日のビッグマッチ、大田区総合体育館大会では、セミファイナルとメインイベントに出場した2人の選手が過去を思って泣いた。

「初めて、1人でタイトルを手に入れることができました」

 上谷沙弥はセミで勝って涙を流した。1日2試合を闘い抜きシンデレラ・トーナメント優勝。4月の1回戦では「師匠」であるワンダー・オブ・スターダム王者の中野たむにオーバー・ザ・トップロープの変則ルールながら勝っている。2019年8月デビューだからキャリアは2年足らず。にもかかわらず、日本武道館でのワールド・オブ・スターダム王座挑戦に続き大舞台で主役の1人となった。

 トーナメント決勝、舞華戦のフィニッシュは超高難度の飛び技フェニックス・スプラッシュ。抜群の運動神経を活かした、華のある“ハイフライヤー”タイプの選手だ。才能にあふれ、キャリアは順風満帆。だが本人は優勝直後、やっと努力が報われたと泣いたのだった。

「プロレスに出会うまでダンスやアイドルをやってきて、辛いことばかりでなかなか努力が報われなくて。プロレスラーとして初めて、1人でタイトルを手に入れることができました」

 上谷は団体が手がけたアイドルユニット「スターダム☆アイドルズ」からレスラーに。「バイトAKB」という企画のメンバーだったこともある。ダンサーとしてEXILEのバックで踊った経験も。アイドルを目指す中で、オーディションに落ちたことは何度もある。派手な人生のようでいて、本人にとっては成功を掴みきれない挫折感があった。

 そんな中で出会ったのがプロレスだったのだ。ここ数年、中野たむ、東京女子プロレスの伊藤麻希などアイドル出身の女子レスラーが増えている。彼女たちはプロレスならではの“輝き方”を掴んだと言っていいだろう。

【次ページ】 「たむさんがいなければ、プロレスに出会っていなかった」

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