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【ラグビー日本代表】「ONE TEAM」になるプロセスをもう一度…ライオンズ戦&アイルランド戦で勝利以上に大事なことは?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/06/18 17:01
2019年W杯に続き、主将を託されるリーチマイケル。フランスW杯へ向けたサバイバルがいよいよ本格化する
W杯の2年前となる2017年夏のテストマッチのメンバーを見ると興味深い。
6月にアイルランド代表が来日し対戦したが、22対50、13対35と2試合とも完敗を喫している(それが2年後にはしっかりと勝ち切った)。
この2試合の先発メンバーを見てみよう(年齢は当時のもの)。
この2試合のメンバーを見て気づいたのは、次のようなことだ。
・2年後のW杯で中心メンバーとなったのは11人。FWの稲垣、堀江、トンプソン、リーチ、マフィ。BKは流、田中、田村、福岡、トゥポウ、松島。加えて、2試合でリザーブに入っていた山中亮平が活躍。
・先発メンバーの平均年齢が26歳台と意外に若い。
・新しい選手の台頭が待たれていたポジションは3番、5番、そして第3列。
・BKは選手の組み合わせの実験段階だった。
当時は課題をあぶり出している時期
まず、2017年の時点での先発メンバーの平均年齢を見ると、26歳台と理想的である。フィジカル的にはピークに向かわんとしている時期であり、2019年に向けて経験を積んでいけば、チームとしての強度が高くなることが予測された。
そしてメンバーの入れ替わりに関してだが、この2年後、幸運なのか、必然だったのか、W杯にはポジションのピースがすべて埋まったのである。
3番にはスクラムに強い具智元を得て、5番にジェームス・ムーア、第3列にはピーター・ラブスカフニ、そして姫野和樹が登場する。また、2017年は「お助け参戦」だったトンプソンは、翌年6月のイタリア戦を自宅のテレビで観戦中、奥さんに「あなた、テストマッチが恋しいんじゃないの?」とズバリと言われ、復帰を決意する。
そしてBKは10番田村、12番に中村亮土を得て(彼は2018年11月のイングランド戦で地位を固めた)、13番ラファエレティモシー、15番にトゥポウ、山中が入って形が整った。
つまり、2年前の夏の時期は、2015年大会の経験者を中心に据えつつ、課題をあぶり出していた時期だった。
ただし、戦術的には錯綜していたのもまた事実である。キックを中心にしたアタックを標榜し、アイルランド戦ではターンオーバーでボールを奪った後にキック、そこからカウンターアタックを食らうという最悪の展開も見られ、中心選手からは「これで大丈夫なのか?」という声も聞かれたほどだった。
この時点では、選手たちの信じる力も弱く、「ONE TEAM」には程遠い状況だった。