ハマ街ダイアリーBACK NUMBER
恐怖の8番・DeNA大和が明かす“絶好調だけど…”「捉え方としては、2番から8番に落とされた感じなんです」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2021/06/18 11:04
5月25日のオリックス戦で、山岡泰輔から今季初のホームランを放った大和。交流戦での大躍進を呼んだ
「ですから、そのフォームを一回取りやめて、どちらかというと昨年までライト方向に入っていった感覚を、センター方向にするようにしたんです」
捨てる覚悟。もともとはプルヒッターであり、自然な形に戻したことに加え、田代富雄、坪井智哉、嶋村一輝ら打撃コーチ陣のアドバイスをひとつひとつ採り入れることで現在の形を作り上げた。経験が豊富なだけにバッティングの引き出しはたくさんあるものの、肝心なのはその組み合わせにある。決して正解はないだけに、大和はいろいろと吟味した。
「全体をいじるということはもうないので多少落ち着いた感はありますけど、まだまだいい方向に行くやり方はあるのではないかと思っています」
不慮の事故からやってきた出番に「そうですね……」
持ち前の向上心を見せる大和ではあるが、結果が出なかった序盤は同ポジションの後輩である柴田竜拓と倉本寿彦をバックアップするようにベンチを温め、決して出番は多くなかった。
「いろいろ上手くいってなかったからこそ苦しかったし、ずるずる行っていたらそのままだったと思います。チャンスが少ないといってもある程度打席数はもらっていたのに結果が出せず、自分の弱さが出てしまった……」
そんな大和が奇しくも出番を増やすきっかけとなったのが、柴田と倉本の負傷による離脱だった。とくに柴田は4月23日の阪神戦、守備で大和と接触してしまい左肩を脱臼してしまった。当事者としてやはり胸中複雑なのでは、と大和に問うと「そうですね……」と眉間にしわを寄せ言葉少なに答えた。だがここはプロの世界。競争もあれば不慮のアクシデントもある。それも踏まえ、大和は言うのだ。
「とくにショートを守れる人間は限られてしまうなか、自分にまかせてもらえるというのはありがたいとことだと思っています。これがいつまでつづくかわからないけど、今ぐらい最低限打てれば試合に出られると思っています」
昨季の多くはセカンドの守備に入るなど、ゆるやかにキャリアの晩節を迎えているのかと思いきや、もし大和がいなかったらチームの交流戦の好調はもちろんなく、それどころか内野はガタガタになっていたといっても過言ではない。本人としてもレギュラーとして活躍することをまったく諦めてはおらず、プロの選手としての矜持を見せつけた。
ただ、若いときとはなにかがちがう。レギュラーを目指していた時代は、同ポジションの選手を蹴落としても手に入れたい立場があった。だが今、レギュラーとしてショートに立つ自分には別の使命がある。