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「勝利かもしくは死を」96年目で初の降格危機…チリの名門コロコロの“商業主義”が招いた低迷とサポーターの過剰な愛憎
text by
ブラディミール・クレセンゾVladimir Crescenzo
photograph byL’Équipe
posted2021/06/16 17:00
負ければ史上初の2部リーグ降格となるプレーオフで、コロコロはウニベルシダード・デ・コンセプシオンに1−0で勝利し降格を回避した
「危機はもう15年も続いている。ByNはサッカーをひとつの産業にして、そこから利益を得ようとしてる。だがチリでは、それがうまくいった例はない。コロコロは企業ではないし、金を生み出す機械でもない」と、クラブ最大のサポーター組織ガラ・ブランカの政治組織アンチファシスタスのメンバーであるアルフレッド・ビエルマは憤る。
ByNが推進するサッカーの近代化は、クラブが伝統的におこなってきたスポーツ活動や社会活動とは相いれなかった。クラブに所属するすべてのアマチュアチームが解体され、ファンとの交流活動も停止した。すると、ソシオのひとつで、2014年の選挙で勝利を得たコロコロ・デ・トドスから反撃の狼煙があがった。会長の座を得てもトップチームへの影響力はないが――意志決定はすべてByNがおこなう――ByNが停止した活動の穴を埋めることはできた。
「全国にスポーツスクールを設立した」と、反撃を推進したアレハンドロ・スニガ・ドロゲットは振り返る。
コロコロが大切にしてきたピッチ外の価値
社会的かつ文化的な活動はコロコロのDNAに組み込まれており、ByNがそれを破壊するのがサポーターには我慢できなかった。ドロゲットが続ける。
「バレーボールやバスケットボールといったByNが廃止したセクションを復活させたんだ。もともとコロコロは教師が創設したクラブだ。彼らにとってはスポーツが生み出す社会的価値が大事だった。だが『株式会社』は、創設者たちが重んじた価値を金銭的な利益に変えようとしている」
利益の追求は2016年にひとつの失敗を招いた。伝統的な白と黒のユニフォームに、ByNは新たに黄色を加えた。
「クラブの歴史始まって以来のことで、伝統を無視したやり方に僕らはボイコットを呼びかけた。ユニフォームの売り上げもクラブ史上最低だった」とビエルマは語った。
コロコロ・デ・トドスにとってはひとつの成功だったが、クラブの置かれた状況を劇的に改善するものではなかった。
「彼らはクラブの育成システムを破壊した」とドロゲットは批判する。
「育成スクールに入ろうとすれば、月々の月謝を払わねばならなくなった。その結果何が起こったか。育成の質が落ち選手が育たなくなった。今季のトップチームはベテランばかりになってしまった」