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ブンデスリーガ“激動の監督人事”…4人の「スライド移籍」&7人の“ラングニック派”で来季の勢力図はどう変わる?
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2021/06/16 17:01
ブンデスリーガでは監督の“スライド移籍”が活発に。バイエルンなど4チームが他チームから監督を引き抜いている
ドイツ、オーストリア、スイスの3カ国がドイツ語圏です。アメリカ人のペルグリノ・マタラッツォ監督(シュツットガルト)は母国の大学卒業後ドイツへ渡り長く現役生活を続けました。マーシュ監督(ライプツィヒ)も、ライプツィヒでコーチを務めており、レッドブル・ザルツブルク(オーストリア)で監督経験もあるためドイツ語が堪能。ハンガリー人のパル・ダルダイ監督(ヘルタ・ベルリン)もドイツでの生活が長く、デンマーク人のボー・スベンソン監督(マインツ)も、現役時代はマインツで長くプレーし、引退後はマインツのアカデミー、オーストリアのリーファリングで指揮を執っていました。
唯一オランダ人のファンボメル監督(ヴォルフスブルク)はドイツ語のエキスパートではないとも思いましたが、彼がまだ現役だった8年ほど前にドイツサッカー連盟が実施したインタビューで、本人がこう語っていた資料を発見しました。
「僕が育ったドイツ国境近くのマースブラハトという街ではドイツのTVが放送されていて、それをよく観ていた。学校でもドイツ語を習っていたから、2006年にバイエルンに移籍加入したときには、すでにドイツ語を話せたんだ」
ファンボメル監督は2006年の8月からバイエルンで約4年半プレーしており、こちらもドイツ語は堪能なようです。つまり、来季ブンデスリーガで指揮する監督は全員がドイツ語を駆使できることになります。
7人もの指揮官が、いわゆる“ラングニック派”
もう1点。来季のブンデスリーガクラブを率いる指揮官の何人かは、ある人物との相関関係があります。
その人物とは、“教授(プロフェッサー)”と称され、幾多のブンデスリーガチームを率い、近年レッドブル・ザルツブルクとライプツィヒの統括スポーツディレクターとして影響力を発揮したラングニックです。ラングニックはフィジカルとスピードを前面に押し出した『パワーフットボール』を提唱し、クロップと並んで『ゲーゲンプレッシング』の生みの親として知られる稀代の戦術家です。
以下が、ラングニックに師事して指導者としてのキャリアを積み上げた監督です。
・ナーゲルスマン(2019-21ライプツィヒ監督)
・マーシュ(2019-21レッドブル・ザルツブルク監督)
・ローゼ(2017-19レッドブル・ザルツブルク監督)
・グラスナー(2012-14レッドブル・ザルツブルク・コーチ)
・ヒュッター(2014-15レッドブル・ザルツブルク監督)
・フランク・クラマー(2019-20レッドブル・ザルツブルク・ユース監督)
・セバスティアン・ヘーネス(2014-17ライプツィヒ・ユース監督)
実に7人もの指揮官が、いわゆる“ラングニック派”として、その実力を内外に示しているのです。
裏に潜む確かな“潮流”。これは来る2021-22シーズンにおけるブンデスリーガの重要なファクターになりそうです。