球体とリズムBACK NUMBER
“欧州SLに乗り気じゃなかったオイルマネー勢”がCL決勝で激突… 注目すべきは20歳フォデンと22歳マウント、出世株の生え抜き
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/05/29 11:01
マンチェスター・シティとチェルシー。オイルマネーで21世紀のメガクラブとなった両者の激突はどのような結果となるか
“生命保険”と“国際的な宣伝塔”という側面
アブラモビッチは自らの身に何かが起こった時の“生命保険”として、マンスールは国家のイメージアップのための“国際的な宣伝塔”として、それぞれのクラブを手にしたと目されている。
好むと好まざるとにかかわらず、それが21世紀のトップクラブシーンのひとつの側面でもあるのだ。
ただし彼らの資金力によって、ピッチ上のフットボールが発展したことも、また事実だ。そして結局のところ、キックオフの笛が吹かれると、ファンは極みのレベルのパフォーマンスを堪能することになる。薄暗い背景は脇に置き、随所に身を乗り出しながら。
極上のペップ・シティの中で推したいフォデン
特に現在のシティには、極上という形容がふさわしい。組織を根幹から作り直し、壮大なプロジェクトを着実に推し進めてきた13年間の、そしてペップ・グアルディオラが指揮を執ってきた5年間の集大成が、今週末のポルトで披露されそうだ(パンデミックの影響により、開催地はイスタンブールから変更された)。
今季は序盤のリーグ戦でレスターに2-5と敗れるなど、不安定な時期もわずかにあったが、グアルディオラ監督は主に守備面を修正してリズムを取り戻すと、本来のショートパスとハイプレスの両輪を軸に無類の強さを誇示。後続に勝ち点12差をつけてプレミアリーグの覇権を奪還し、チャンピオンズリーグでは12試合11勝1分(25得点4失点)と、ほぼ完璧な足取りでクラブ史上初の決勝に辿り着いた。
新たに加わってすぐさま最終ラインのリーダーとなったルベン・ディアス、2年目に指揮官の意図を完全に理解して高性能な偽SBの代名詞となったジョアン・カンセロ、キックをはじめ全能力が最高水準にあるケビン・デブライネ、セントラルMFながらリーグ戦のチーム得点王となったイルカイ・ギュンドガンなどなど、活躍した選手を挙げればキリがない。
ただ、決勝でもっとも注目すべき選手をひとりだけ選ぶなら、フィル・フォデンを推したい。