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“欧州SLに乗り気じゃなかったオイルマネー勢”がCL決勝で激突… 注目すべきは20歳フォデンと22歳マウント、出世株の生え抜き
posted2021/05/29 11:01
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
誰が呼んだか、スポーツ洗浄ファイナル──。
欧州では、今季のチャンピオンズリーグ決勝を、そんな風に捉える向きもある。好むと好まざるとにかかわらず、21世紀のエリートフットボールの成り立ちは、非常に複雑なのだ。
スポーツウォッシング【sportswashing:名詞】とは、2018年にオックスフォード辞書に認められた英語の新語のひとつで、国家や団体、人物などが、スポーツを利用して自らのイメージを高めようとしたり、不都合な事実から目を背けさせようとすることを意味する。「事実を隠す(こと)」という意の【whitewash:動詞/名詞】から派生した言葉だ。
古くはナチ政権下のドイツが開催した1936年五輪がそれにあたるとされ、行為自体は特に新しいものではない(ウィキペディア英語版には、今年に延期開催されそうな東京五輪もそのひとつと記されている)。だがそれを明示する言葉が最近になって生まれたのは、近年の主要スポーツイベントの多くが、かような動機を持つホストに開催されるようになったからだろう。
世界中に大きな影響力を持つフットボールは、“洗浄”を試みる側にとって、もっとも重要な手段のひとつだ。そしてこの競技のトップレベルでは、主要大会の開催権だけでなく、クラブの主権までもが、潤沢な資金と深い闇を持つ国家や人物の手に渡っている。
アブラモビッチ、アブダビの王子がクラブを持つワケ
そして今季は史上初めて、そんな勢力同士が欧州の頂上で対峙するのだ。
2003年に外国人ビリオネアオーナーの先駆けとなったロシア人オリガルヒ、ロマン・アブラモビッチが所有するチェルシーと、2008年にアブダビの王子シェイク・マンスールが買収したマンチェスター・シティ。どちらも新オーナーの財力によって、超一流の仲間入りを果たしたクラブだ。
ちなみに両クラブは先日の欧州スーパーリーグ騒動の際、最初に脱退を決めたばかりか、もとよりその構想に積極的ではなかったと言われている。なぜなら、アメリカ的な手法で寡占的に大儲けしようとした首謀者たちとは、そもそもクラブを持つ理由が違うからだ。