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“欧州SLに乗り気じゃなかったオイルマネー勢”がCL決勝で激突… 注目すべきは20歳フォデンと22歳マウント、出世株の生え抜き
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/05/29 11:01
マンチェスター・シティとチェルシー。オイルマネーで21世紀のメガクラブとなった両者の激突はどのような結果となるか
20歳にして16得点10アシスト、大人びたプレー
グアルディオラが惚れ込む20歳のレフティーは、このクラブの象徴となりつつある地元生まれの下部組織出身者だ。
地域コミュニティーとの結びつきを重視する運営陣にとっても、彼の台頭は僥倖に違いない。今季はアタッカーとしての能力を開花させ、全公式戦で16得点10アシストをマーク。ボルシア・ドルトムントとのCL準々決勝では、第1戦で凄まじい左足のミドルで決勝点、第2戦でもボックス内から流し込んで再び決勝点を挙げている。また本来のポジションである中盤の中央でも、この年齢の選手とは思えない大人びたプレーを見せる。
CL決勝ウィークの記者会見に登壇したギュンドガンは、シティの選手で唯一のCL決勝経験者だ(ボルシア・ドルトムントの一員として2013年決勝に出場し、バイエルン・ミュンヘンに敗北)。今季のキャプテンのひとりは、決勝に向けてフォデンにどんなアドバイスをするかと問われると、次のように答えた。
「フィルは今季、このチームの完全な主力になった。シーズンを通して、さまざまな能力が飛躍的に高まったね。最大のポイントは、決定的な瞬間に的確な判断を下せるようになったこと。あの年齢で、本当にすごいことだよ。だから、僕が彼に言葉をかけるとしたら、ここ数週間のプレーをなにひとつ変えないように、と言うね」
チェルシーのトゥヘル監督は“決勝で連敗続き”だが
対するチェルシーは、過去2度のCL決勝進出時と同じく、シーズン途中に就任した監督の下でここに到達した。
アブラム・グラントが率いた2008年はユナイテッドに敗れ、ロベルト・ディマッテオが束ねた2012年はバイエルンに勝利したが、トーマス・トゥヘルが采配を揮う今回はどうなるか。ひとつ言えるのは、過去の2人と比べて、指導者としての実績も実力も、この47歳のドイツ人指揮官の方が当時の彼らよりもはるかに上だということ。
その証拠に、彼は昨季、パリ・サンジェルマンの指揮官としてCL決勝を戦っている(バイエルンに0-1で敗北)。逆の見方をすれば、今季のFAカップ決勝でもレスターに敗れており、直近2度のファイナルで連敗しているとも言える。
リーグ戦では最終節にアストンビラに1-2と敗れながら、他会場でレスターも負けたため、なんとか4位で来季CL出場権を確保。もし逃していれば、CL決勝でシティに勝つしかなかった。その不安がなくなったからといって、気が緩むことはないはずだが……。