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「GKは止めることが一番の仕事なんだから」 権田修一が“欧州で指導する同期”と考える日本人守護神育成プランとは
text by
谷川良介Ryosuke Tanikawa
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/05/27 11:02
権田修一ら現役選手からの声が多く出て来ることで、日本におけるGK事情も大きく変わってくるかもしれない
ロティーナ監督のもとでやって感じたこととは
権田:今季からエスパルスでロティーナ監督と一緒にやるようになってすごく感じたことなんだけど、GKは正しいところにボールを止めて、ちゃんと蹴れる能力だけあればいいんだよ。それはしっかり練習したらどんなに下手だったとしても、うまくなる部分。
中野:そもそも、複雑なことは求めてないっていうね。
権田:そう。キラーパスは求められないし、高度なプレーをやる必要はまったくない。バックパスをトラップして、ボールをいいところに置く。そしてフリーの味方にパスをする。それだけシンプルなことができればボールはちゃんと回るんですよ。でもGKの足元の技術が低いと、チームの認識として「どうせ、つなげないんだから蹴ったほうがいいじゃん」ってなってボールを蹴っちゃうの。それでドツボにハマる。そこの部分は最低限、みんなできると思うんだよね。
中野:相手2人からプレッシャーをかけられる場面は基本的にないもんね。
権田:そもそも、その状況でGKに下げちゃダメだから。そうやってGKが苦しい場面でパスをする状況にならないように組み立てていればいい。「やり直す時にGKに戻そう」とか「GKにボールが入った時は逆サイドのスペースがある時」とか、そういうことがエスパルスはしっかりあるから、すごく楽。前半だけで俺がパス数でチーム3位になった試合もあるぐらいだからね。
中野:そんなに入り込むこともあるんだ。
権田:そう。ちゃんとGKをフィールドプレーヤーと同じように作戦盤に入れていて、このときにはここにポジションを取ろう、とか。最低限の技術があればポゼッションに参加できるし、チームとしてGKの役割を明確にしておけば、特別に難しいことはしなくても貢献できる。
中野:作戦盤に入れる、か。今のはいいこと聞いたな。「GKを使ってやり直そう」で終わらずにね。
権田:そうなったらGKもやりやすいと思うよ。なんか、ただのサッカー談義になってきましたね(笑)。
現役のうちからこういう話をしたら、GKが……
――ちなみに権田選手は、指導者など引退後のキャリアを考えていますか?
権田:いやいや、引退したら何もしないで生きていこうと思ってます(笑)。
中野:働け、働け(笑)。
権田:いまはいけるところまで現役を続けたいという思いがあるから何も考えていなくて。仮にあと2年で引退しなければいけないという制限時間があるなら、その先をイメージできるけど。
――そういう経験や課題と感じていることを伝える場所として、今回のプロジェクトを立ち上げた?
権田:実際、エスパルスが強くなるために呼ばれているのでチームメイトにもこういう話はしますし、逆にこうやってメディアで伝えられる機会があったら、別に現役のうちからやってもいいと思っていました。「ONE1-GK」で子どもたちだけでなく、指導者の方々にもこういう話をしたら、GKがプレーしやすくなる可能性もある。だから、それを引退後にやるとか、線引きする感覚はないというか。
それに僕自身、完璧だとはまったく思ってないし、もっともっと知らなきゃいけないと思っている。今まで自分が経験してきたことが誰か1人のためになるなら、どんどん発信したほうがいいし、自分も成長したい。だから「ONE1-GK」はJリーガーみんなに使ってほしいんですよね。
中野:だから個人でやるのではなく、選手会を巻き込んでやるんだね。
権田:100人いれば、100通りの考え方がある。それぞれプロに上り詰めた経緯があるから。学生たちに「これだけ挫折してる人もいるんだ」「だから俺も頑張ろう」と思ってもらえればそれはそれでいいし。
――先ほど挙げていた環境面の整備以外で、何か構想はあります?