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「おまえの代わりなんていっぱいいる」顧問の暴言罵倒が子供を死なす…現代の体罰は“殴る・蹴る”だけじゃない
text by
中小路徹Nakakoji Toru
photograph byGetty Images
posted2021/05/31 06:00
スポーツ界で問題となってきた暴力的指導。その暴力が変異した形で、根強くはびこっている
聡さんは建設業に携わる。「私の業界では、災害があった時、各社が集まって協議会を持ち、水平展開して防止策をつくる。そうした共通認識づくりへの努力が、学校スポーツ界はまったくなされていない。起きるべくして起こったと言われても仕方がない」
言葉や威圧で精神的に追い込む指導は、指導者自身が選手時代に受けてきた指導を、教える立場になっても繰り返す「負の連鎖」であるケースも少なくない。
「今の時代、そうした言動は一般社会で禁じられているハラスメントと同じで、本来は社会通念に照らし合わせれば、『やってはいけない』と解決する問題。それが、スポーツで実績を残して大学を出て、すぐ『先生、先生』と言われ、何が正しい指導か、学ぶ機会を持とうとさえ思っていないのでは」
聡さんは、何が暴力に当たるのか、という学びが急務だと、語気を強める。
「殴らなければ大丈夫」は、間違っている
殴らなければ暴力的指導には当たらない、という考え方は、ガイドラインに沿っても、社会通念に照らし合わせても間違っている。
そして、殴っていなくても、虐待ともいえる精神的圧迫を受けた部員たちに、取り返しのつかない悲劇が繰り返して起きていることを、スポーツ界全体が再確認してほしい。