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「おまえの代わりなんていっぱいいる」顧問の暴言罵倒が子供を死なす…現代の体罰は“殴る・蹴る”だけじゃない 

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中小路徹

中小路徹Nakakoji Toru

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posted2021/05/31 06:00

「おまえの代わりなんていっぱいいる」顧問の暴言罵倒が子供を死なす…現代の体罰は“殴る・蹴る”だけじゃない<Number Web> photograph by Getty Images

スポーツ界で問題となってきた暴力的指導。その暴力が変異した形で、根強くはびこっている

 先の「暴力行為根絶宣言」では、暴力行為に「言葉や態度による人格の否定、脅迫、威圧、いじめや嫌がらせ」も含めている。文科省のガイドラインでも、「身体や容姿にかかわること、人格否定的な発言」を許されない指導と位置づけている。

 それでも、「言葉」「威圧」といった暴力への認識は甘く、逆にそれらが“台頭”する形になってしまっている。

 そんな中、今年、沖縄県の部活動で、あってはならないことが起きた。

 沖縄県立コザ高の部活動でキャプテンを務めていた2年生の男子生徒が、1月29日に転落死した。自ら命を絶ったとみられている。沖縄県教育委員会の第三者調査チームが3月19日に報告書を発表した。

LINEで深夜も顧問から連絡、泣きながら丸刈り……

 報告書によれば、この部は県内や九州大会で優勝する強豪だ。生徒は「部活動特別推薦」で入学。昨年7月にキャプテンに選出された。

 生徒は顧問から、「キャプテンをやめろ」といった精神的な負担となる言葉を、日常的に投げられていた。「LINE」を使い、夜中まで連絡を受けることもあった。昼夜を問わず、緊張状態に置かれていた、と想像できる。

 大会前日に、泣きながら丸刈りにする様子が家族から目撃されていたこともある。報告書は「丸刈りは強制されたとまでは考えられないが、競技の勝敗の理由付けに髪形を利用されることを苦痛に感じ、丸刈りにするしかない心理状態に追い込まれていた可能性がある」と記述している。

 自死する前日には、顧問の指示で週1度、通っていた学校外の施設での練習に向かおうと部活の練習を切り上げると、「時間が早い」と叱責されていたという。

「何が正しい選択なのか、どうすれば顧問に叱られずに済むのか、がわからず、行き場を失ったことが『最後の引き金』になった可能性が高い」

 報告書は直接の経緯をそう結論づけ、「(自死の)要因は部活顧問との関係を中心としたストレスにあった」と総括した。

「勝利至上主義」と「顧問1人の密室状態」

 そして、根底にある勝利至上主義を指摘する。

「部活のやりがいや楽しさより、勝つことを重視していた」

「顧問も部員も、優勝のプレッシャーを感じていた可能性が高く、主将も重圧を感じていたものと考えられる」

【次ページ】 バレーボール部員の死「おまえの代わりなんていっぱいいる」

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