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久保建英は「“期限付き移籍”の難しさ」「レアルで能力を最大化できる」 中西哲生に聞く“今季はどうだった?”
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/05/24 11:03
ヘタフェでの今シーズンを終えた久保建英。レアル・マドリーへの復帰は実現するのか?
逆サイドを狙うのであれば、DFの股間を抜かなければ入らない角度でした。しかし、スピードに乗ってドリブルをしていたので、股間を狙うと相手の足に当たってしまうことも考えられる。
得点の確率が高いコースは、ニアサイドの上でした。そのとおりに久保は、「ニア上」と呼ばれるところを撃ち抜いたのです。
ゴールが決まった瞬間、ある場面が記憶のなかで立ち上がりました。17年4月のJ3リーグで、久保が決めたJリーグ初得点です。この場面も左サイドの角度のないところから、ニア上へ突き刺したのでした。
あのゴールが「掛け値なしに評価できる」理由
レバンテ戦のようなシュートは、何千回と練習をしてきました。彼と初めて会った小学生当時から、身体に染み込ませてきたパターンです。
そう考えると、技術的な驚きはありません。私が感心させられたのは、今シーズンまだ1点も取っていないなかで、チームの1部残留がかかっているなかで、あのシュートを決められるメンタルセットができたことです。
決めたい、決めなきゃ、決めてやる、といった気持ちが強く出ると、どうしても身体に力が入ってしまいます。決まるフォームでシュートを打てなくなってしまう。
力任せに思い切り打ったら、あのシュートも入らなかったでしょう。ビジャレアル加入後から苦しんできた思いを脇に置いて、「この角度ならニア上だ」と冷静に判断したからこそ、ゴールに結びついたのです。
試合で使えるスキルは「技術+思考」によって表現されます。感情が先立つことがなく、冷静な思考が上回ったあのシュートは、掛け値なしに評価されるものでした。
決めるべき場面で決めた今回の体験は、国際舞台でも生かされるはずです。彼とは「W杯のプレッシャーのかかる場面で、論理的に決める」ことを前提に、トレーニングを重ねてきました。ヘタフェ戦のゴールは、たとえば東京五輪で同じように重圧のかかる場面を迎えたときに、成功体験として久保の支えとなるはずです。
レアルには「彼の能力が最大化する環境が整っている」?
新シーズンの去就については、憶測も含めて様々な報道が飛び交っています。個人的な意見を言えば、レアル・マドリーに戻ってほしい。