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久保建英は「“期限付き移籍”の難しさ」「レアルで能力を最大化できる」 中西哲生に聞く“今季はどうだった?”
posted2021/05/24 11:03
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
久保建英のラ・リーガ2シーズン目が、現地時間5月23日に幕を閉じた。
数字だけを見れば、厳しいシーズンだった。ビジャレアルではリーグ戦13試合に出場したが、スタメンはわずかに2試合で、プレイングタイムは291分にとどまった。
冬の移籍市場で加入したヘタフェでは、18試合でピッチに立った。不出場は4試合だが、先発は8試合に限られる。プレイングタイムも801分と、先発フル出場の9試合相当分だ。リーグ戦35試合出場で23試合に先発したマジョルカ在籍時に比べると、大きく減らしてしまったことになる。
苦難の日々を過ごすなかで、最終盤に大きな仕事をやってのけた。リーグ戦が残り2試合となった5月16日のレバンテ戦で、決勝点を叩き出したのだ。自身のシーズン初ゴールによって、ヘタフェを1部残留へと導いた。
ラ・リーガでの2シーズン目を、中西哲生氏に振り返ってもらう。プロ入り以前から久保を知る中西氏は、レバンテ戦のゴールにこれまで報道されていない事実を読み取るのだ。
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「期限付き移籍」という立場に悩まされたシーズン
久保の今シーズンを振り返ると、「立場」に悩まされたと言うことができます。ビジャレアルでもヘタフェでも、レアル・マドリーからの「期限付き移籍」としてプレーしていました。所属元に戻ることを前提とした加入です。
もちろん、必要な戦力として迎えられたわけですが、ビジャレアルではシーズン序盤からクラブ生え抜きの選手が結果を残していきます。1シーズンでいなくなることが決まっている選手と、将来的に活躍の期待される若手が、同じポジションにいたら──クオリティに明らかな違いがなければ、後者が選ばれるでしょう。若い選手を育てることは、長期契約を結ぶにせよ、他クラブへ売却するにせよ、クラブの利益につながるからです。
期限付き移籍の選手でも、「買い取りオプション」がついていれば状況は変わります。次のシーズンは正式にチームに迎えることが可能なら、その選手を起用する理由になるでしょう。
ヘタフェを率いるホセ・ボルダラス監督の方針転換も、久保にとっては不運でした。冬の移籍市場でカルレス・アレニャと久保を獲得し、自分たちでボールを保持するサッカーを目指しました。ところが、思うような結果が出なかったこともあり、それまでのサッカーへ戻します。強度の高い守備を前面に押し出したスタイルで、久保の序列は下がっていったのでした。