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久保建英は「“期限付き移籍”の難しさ」「レアルで能力を最大化できる」 中西哲生に聞く“今季はどうだった?”
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/05/24 11:03
ヘタフェでの今シーズンを終えた久保建英。レアル・マドリーへの復帰は実現するのか?
「個」を発揮されることを求められない
ヘタフェでは18試合に出場しましたが、そのうち10試合が途中出場でした。途中出場ではプレイングタイムが短いケースが多く、久保が特徴を発揮しにくいシチュエーションでの起用もまた多かったのです。
いくつか例をあげましょう。
現地時間2月27日のバレンシア戦は、後半40分から出場しました。この時点でスコアは2対0です。久保のタスクはこのままゲームを締めることです。先発出場へのアピールは求められていないので、リスクの少ないプレーを選ばざるを得なかったのです。
3月13日のアトレティコ・マドリー戦、4月18日のレアル・マドリー戦は、どちらも出場がなかった。優勝争いをしている両チームを相手に、0対0で引き分けたゲームです。守備のタスクも十分に果たせるものの、攻撃に特徴のある久保を起用するには、難しい試合展開でした。
限られた時間しかピッチに立つことができず、なおかつ個性を発揮することも求められない試合も続いたのですから、行き場のないストレスを抱えていたに違いありません。しかし久保は、自分で変えることのできない要素に対して一喜一憂しないのです。
「出場していないときにもしっかりと練習に取り組んできたし、監督もそれを分かってくれていた」と彼自身が話していましたが、そうしたブレのないプロフェッショナルの姿勢が、レバンテ戦のゴールにつながったのでしょう。
久しぶりの「点をとる」タスクを…
レバンテ戦では、1対1で迎えた後半30分に投入されました。タスクは明確でした。1部残留につながる得点に関われ、というものです。
私自身は、「15分あればひとつはチャンスに関われるはずだ」と考えていました。おそらく久保選手も、同じような気持ちだったのではないでしょうか。このレバンテ戦より出場時間の長い試合はありましたが、「点を取ってこい」と背中を押されて投入されるようなシチュエーションは、本当に久しぶりだったからです。
ゴールは必然でした。相手GKのミスもあって、ゴールへ向かって迷わず仕掛けられるエリアで、1対1の局面を迎えることができた。ヘタフェに加入してから待ち望んでいたシーン、と言っても良かったでしょう。そして、ペナルティエリアに入るか入らないか、というところまでドリブルで持ち込み、左足でニアサイドの上へ蹴り込んだのです。