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ダルビッシュ有も「唯一、取られて困る」…メジャーで“カッター”急増中? “投手の基本は真っ直ぐ”に縛られない投球術

posted2021/04/21 11:20

 
ダルビッシュ有も「唯一、取られて困る」…メジャーで“カッター”急増中? “投手の基本は真っ直ぐ”に縛られない投球術<Number Web> photograph by Getty Images

パドレス・ダルビッシュ有投手

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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 初めて「カット・ファストボール」という名称を聞いたのは、ヤンキースのマリアノ・リベラが登場した時だと思う。後にメジャーリーグ(MLB)最多の通算652セーブを記録して殿堂入りするリベラは当時、まだ試合の九回に登板するクローザーではなく、七回や八回に登場するセットアッパーだったが、時速150キロ台半ばの速球が左打者の手元にえぐり込むように曲がるのを見て、妙に胸が騒いだ記憶がある。

 カット・ファストボール=通称カッター。日本ではなぜか「カットボール」と呼ばれているこの球種は、言葉尻だけ取れば「ファストボール=速球」なのだが、昔は高速スライダーなどと呼ばれた時期もあった変化球である。それが今、西海岸のチームで注目されている。

今季初のノーヒッター達成を分析すると

 4月9日の金曜日、サンディエゴ・パドレスのジョー・マスグローブ投手が、敵地でのレンジャーズ戦で今季メジャー初の「ノーヒッター」を達成した。

 同記録はオフの間に、中地区のピッツバーグ・パイレーツからトレードで生まれ故郷のチームに移籍した同投手が達成したことで、「運命的な出来事」として報道された。パドレスにおいても球団創設53年目にして初の大記録だったことで、様々な媒体で追加取材され、そのピッチングが分析された。

 もっとも簡単な分析の一つが、マスグローブが投げるカッターの配球比率が増えたことだろう。

 MLBの公式分析サイトである「Baseball Savant」によると、マスグローブは昨季、(1)ファストボール(4シーム)=26.9% (2)スライダー=24.2% (3)カーブ=19.9% (4)シンカー(2シーム)=11.9% (5)チェンジアップ=10.7% (6)カッター=6.4%という配球比率だった。

 それが今季は(1)スライダー=26.8% (2)カッター=24.7% (3)カーブ=18.9% (4)ファストボール=12.6% (5)チェンジアップ=10.0% (6)シンカー=6.8%と「様変わり」している。とくにファストボール(4シーム)が昨年の26.9%から12.6%と激減したのに対し、カッターは6.4%から24.7%へと激増している(数字はすべてノーヒッター達成直後)。

“あの投手”も「カッター」をメイン球種にしている

 伝統的な先発投手なら、4シームか2シームの「ファストボール=速球」をメインに投球を組み立てるものだ。実際、マスグローブがノーヒッターを達成した5日後に、あわや完全試合の快投でノーヒッターを達成したシカゴ・ホワイトソックスの左腕カルロス・ロドン投手は、全投球の60%がファストボール(4シーム)で、マスグローブのノーヒッターを支えたビクター・カラティニ捕手が昨年、カブス時代に初めてのノーヒッターを体験した時のアレック・ミルズ投手も、全体の47%が2シーム・ファストボール、次に多い17.2%が4シームと、速球主導の配球で記録を達成している(数字はすべて現地4月15日時点)。

【次ページ】 マスグローブが語った「ダルビッシュ有の凄さ」

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