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ダルビッシュ有も「唯一、取られて困る」…メジャーで“カッター”急増中? “投手の基本は真っ直ぐ”に縛られない投球術
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/04/21 11:20
パドレス・ダルビッシュ有投手
マスグローブのようにカッター(=変化球)を持ち球の中でもっとも多く投げる先発投手は珍しいが、まったくいないわけではなく、実はとても身近にいる。昨季、カッターをメイン球種として、サイ・ヤング賞の最有力候補になった投手……そう、マスグローブの同僚ダルビッシュ有投手である。
4月12日のパイレーツ戦で今季初勝利を上げたダルビッシュは登板後、「今日は真横というより斜めに落とす感じ」でスライダーを投げ、「前回から遅いカーブが良かったけど、途中から速いカーブも入れていった」と話すなど、同じ球種でも変化の仕方や速度に違いをつけて打者に的を絞らせない投球をする。そのメイン球種はカッターで、同試合でもカッター=26.3% (2)スライダー=24.2% (3)カーブ=20.0% (4)ファストボール(4シーム)=18.9% (5)スプリット・フィンガー=6.3% (6)2シーム=4.2% という配球比率だった。
マスグローブが語った「ダルビッシュ有の凄さ」
ダルビッシュはマスグローブについて訊かれ、「カラティニ(捕手)の配球的に、凄く僕に似ている配球をしていたので、自分に似たタイプのピッチャーかなと思います」と答えているが、10日付で更新した自身のブログでもこう綴っている。
「(マスグローブとは)スプリングトレーニングから色々話す機会が多く、開幕してからはさらに仲良くなり一緒にいることが増えてます」
同ブログではサンディエゴ近郊でコーヒー店を営む両親の影響で「コーヒーが大好き」になったマスグローブのために「コーヒー柄」のスパイクや、日本人選手が愛用する「5本指の靴下」を贈ったことを写真入りで明かしているが、大事なのは持ち球の多い2人の投手が、同じ時期に同じチームにいるという事実だろう。
実は今年のキャンプ中、マスグローブは会見でこう言っていた。
「僕には6つ球種があるが、シーズン中は球種によって良かったり悪かったりで使える時と使えない時がある。彼(ダルビッシュ)は8、9の球種があるのに、シーズンを通して良い状態を保っている。いったい、どうやっているのか、そこは一番知りたいところだね」
そういうコメントを「弟子入り志願」などと書くのは、我々日本のメディアの悪癖かもしれないが、マスグローブのコメントを聞いてもう1人、思い出す投手がいる。それは昨季シンシナティ・レッズで、ナ・リーグのサイ・ヤング賞投手に輝いたトレバー・バウアー投手(ロサンゼルス・ドジャース)だ。
バウアーはダルビッシュの投球を分析して……
バウアーは、自身のYouTubeチャンネルでダルビッシュの投球分析をして、「同じ投球フォームから、同じような軌道の球を投げることで、打者は錯覚する。(打ち取るための)伏線を張って、それをどんな風に(アウトとして)回収するのか。そのヒントがダルビッシュのビデオにあった」と語るなど、影響を受けたことを隠していない。