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ダルビッシュ有も「唯一、取られて困る」…メジャーで“カッター”急増中? “投手の基本は真っ直ぐ”に縛られない投球術
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/04/21 11:20
パドレス・ダルビッシュ有投手
バウアーはマスグローブやダルビッシュと比較すると、「伝統的な先発投手」像に沿った配球をする投手で、持ち球で一番多く投げるのは「ファストボール(4シーム)=速球」(今季44.3%・4月15日時点)なのだが、興味深いのは2番目に多いカッターの配球比率が30.2%もあることだ。それは今季序盤の少ないサンプル内に限って言えば、マスグローブの25.1%、ダルビッシュの34.1%のちょうど中間ぐらいの配球比率である。
バウアーのカッターが「2番目に多い球種」になったのは昨季からで、それまではカーブが多かった(著者注:2013年は全体の2割程度ながらカッターが2番目に多かった)。ダルビッシュはよく「偽装」という言い方をする。カッターの配球比率が増えたからサイ・ヤング賞が獲れたのだと言うつもりはないが、無関係でもないだろう。
ダルビッシュ「唯一取られて困るのはカッターです」
ダルビッシュは件の今季初勝利の際、「自分から唯一、取られて困るのはカッターです」とその重要性を口にしているが、たとえば「投手の基本は真っ直ぐ」などというような伝統的な考えや常識に縛られていると、そういう発想にはならないだろう。
大事なのは、投手本来の目的である「アウトを取ること」、それを「なるべく連続で、なるべく多く取ること」を達成するため、ピッチングという名の戦術をデザインすることだ。
どんな物事に対しても柔軟性や多様性が求められている今の世の中に、ダルビッシュやマスグローブ、バウアーのように既成概念を覆すようなピッチャーが活躍しているという事実が、何とも興味深い――。