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早稲田ラグビー復活の立役者・相良南海夫はなぜ3年間、「与えない」と「部活動に戻す」を徹底したのか 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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photograph byYuki Suenaga

posted2021/04/16 17:01

早稲田ラグビー復活の立役者・相良南海夫はなぜ3年間、「与えない」と「部活動に戻す」を徹底したのか<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

昨年度限りで早稲田ラグビー部監督を勇退した相良南海夫氏。充実した笑顔を浮かべながら3年間を振り返った

「後半20分に負けていたとしても、そこから相手を慌てさせて、『本当に早稲田に勝てるんだろうか?』と不安にさせるのが早稲田のラグビーです。ところがズルズルとそのままやられてしまった。当時、主将の佐藤真吾から上がってきたスローガンは『Moving』というものでした。変わろうとする意思表示であり、プレー中に仕掛けようとする動きを言葉に込めたはずです。ところがあの試合は、学生からはひたむきさの欠片も感じられなかった。あの時ばかりは、怒りました。監督を務めた3年間で、怒ったのはあの時だけだったと思います」

 病巣はどこにあったのか。

 相良監督はアタックを例にとり、「正解」と「ルールに則った正しさ」を求める弊害を説明してくれた。

「いまのラグビーは、すべてが計画的です。たとえば、スクラムからの一次攻撃はセンターが突っ込んで、フランカーとブラインドウィングがブレイクダウンに入ってボールを確保し、次のフェイズに移る。でも、たまたま一次攻撃でセンターが抜けてしまった場合、他の選手たちはそのプレーに反応して、フォローに走るのが当然です。ところが、センターが抜けているのに、ロックの選手がフォローに走るのではなく、二次攻撃で出来るであろう所定の場所に走っていこうとするんです。それではフォローが遅れてしまい、結果的にノットリリースザボールを取られたり、ターンオーバーを許してしまうわけです」

 選手たちの即興に対応する力は失われ、ルールに従うことが優先されるようになっていた。

「そのFWの選手の判断は、部のルールとしては正しい。でも、ラグビーとしては正解ではない。正しいことを意識しすぎて、自分たちで何かを作り上げるという気概が感じられませんでした。早稲田の基本的なスタイルは、相手より走り、先に仕掛け、イーブンボールでは先んじる。この根本的な姿勢を学生たち自身が求める必要がありました」

処方箋は「与えないこと」

 こうした病巣をどのようにして取り除いたのか。

 相良監督の提示した処方箋は「与えないこと」だった。

「コーチ陣に話したのは、『学生たちにやらせないように』ということでした。学生たちが気づくまで、ヒントを与えたり、正解を言わないようにしようと話しましたね。でも、その頃は学生たちから『どうしたらいいですか?』と質問してくることがまだまだ多くて、答えを言わずに『どうしたいの?』と聞き返すようにコーチ陣に話していました」

 そしてもうひとつ取り組んだのは、早稲田大学ラグビー部を「部活動」の一環に戻したことである。

【次ページ】 「全部員、平等になったんです」

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