Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「ライバルなんて思ったことは…でも」 鳥栖の39歳・金明輝監督が持つ阿部勇樹らへの敬意と“指導者のプライド”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph bySAGAN TOSU
posted2021/04/06 17:01
金監督の熱い指導で、サガン鳥栖はさらなる飛躍を果たせるか
「ウイングバック」を「ウイングハーフ」と呼ぶ意図
――20年5月には、AI企業のLIGHTzとパートナー契約を結ばれました。育成ではAIを取り入れているそうですが、トップチームでもAIを活用されているんですか?
「エビデンスとして、数字で示されると、選手たちも納得感があるじゃないですか。なので、有効活用できるデータがあるのならば欲しいと。これを高めれば限りなく勝利に近づけるとか。でも、トップチームではまだ積極的に採用できていないのが現実です。ただ、スタッフの中にLIGHTzの社員の方が出向してきていて、独自の点数の付け方など、試行錯誤してくれている。僕たちも案を出したりして、興味深い指標は出てきているので、未来への投資というか、僕が監督をやっているうちに、活用できるといいなと思っています(笑)」
――チーム内では「ウイングバック」を「ウイングハーフ」と呼んでいるそうですが、どんな効果が生まれたり、どんな効果を期待されたりしているのでしょう?
「ウイングバックと言うと、5-3-2で守るイメージがあるかなと。僕らは基本的には5-3-2とは言わなくて、3-5-2と言う。ウイングハーフだと。基本的にはディフェンスは3人。で、下がるなと。サイドが下がるのは、最終的にディフェンディングサードで守るときだけだと。前に出ていくところにプライオリティを持ってほしいという思いを込めています。単なる言葉の問題ですけど、選手の意識に働きかける効果はあるんじゃないかなと」
――5バックには極力したくないと。
「そうです。それにディフェンディングサードで守るときでも、相手の陣形によって片方のウイングハーフは残って、もう片方は落ちて4枚で守るときもあります」
ペナまではロジックでボールを運べますが
――先日、新加入選手でナイジェリア人のチコ・オフォエドゥ選手、ケニア人のイスマエル・ドゥンガ選手がようやく来日しましたね。ふたりのストライカーは、チームにどんな変化をもたらしてくれそうですか?
「セレッソ戦のようなゲームで、高さやパワー、スピードでゴールをこじあける。そこに期待しています。ペナ(ペナルティエリア)まではロジックでボールを運べますけど、その中ではマンパワーがモノを言う。だから、そこで個人能力、クオリティを発揮してほしいですよね。(4月3日の)浦和レッズと鹿島アントラーズの試合で、山中(亮輔)選手がピンポイントクロスを上げていたじゃないですか。ゴールは取り消されてしまったけれど、スーパーですよ、あのクロス。あんなのを蹴れる選手がいたらいいなあと思ったりします(笑)」