Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「ライバルなんて思ったことは…でも」 鳥栖の39歳・金明輝監督が持つ阿部勇樹らへの敬意と“指導者のプライド”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph bySAGAN TOSU
posted2021/04/06 17:01
金監督の熱い指導で、サガン鳥栖はさらなる飛躍を果たせるか
うちに来てくれた以上は、なんとか育てたい
――そういった経緯があるんですね。
「うちに来てくれた以上は、なんとか育てたい。入った当初は群を抜くような選手たちではなかった。ただ、彼らは意識が高かったし、当時の先輩たちもいい影響を与えてくれました。クラブをあげて、彼らをしっかりと育てられたかなと思います。あと、アヤックスで勉強になったのは、トレーニングの内容ひとつ取っても、ゲームモデルから逸脱していることがひとつもないんですね。どんなトレーニングにも常に戦術的な要素が入っているし、単純なボール回しでも、ボールを奪ってゴールに入れるという要素が入っていたり。そうしたことは僕も意識するようになりました。
当時、オランダも転換期を迎えていたみたいで。ヨーロッパではリバプールをはじめ、インテンシティがすごく上がっていた時期で、(マンチェスター・)シティでさえもものすごい勢いでボールを奪い返しにいく。オランダも強度というものをもう一度見つめ直そうとしていた。そうやって、サッカーの潮流に敏感で、いいチームの優れたものはすぐに取り入れようとする、フレキシブルに戦術を改善していく文化にも、刺激を受けましたね」
サガン鳥栖と言えばハードワーク
――インテンシティの部分は鳥栖の特長でもあります。堅守速攻の時代も、今のようにポジショニングで優位に立ってボールを運ぶスタイルにおいても、インテンシティや運動量は鳥栖のサッカーのベースだと考えていいでしょうか。
「間違いないですね。監督をするうえで、クラブのアイデンティティやフィロソフィをしっかりと理解することが大事だと思います。サガン鳥栖と言えばハードワーク。これはJ2時代から変わらないですし、ファン、サポーターがそうした闘う姿勢を望んでいる。ベースを維持したまま、それをうまく有効活用して、次のフェーズに進みたいと僕は考えてきました。以前のようなロングボール主体もひとつのストロングではありましたけど、今は前線に制空権を確実に掴んでボールを収められる選手がいないので、技術のある選手たちを生かしてボールを運ぶことにトライしている。そのベースには、間違いなくインテンシティや運動量があります」