リスペクトは変わらないが、指導者としては……

――ベガルタ仙台の手倉森誠監督は、中山雅史さん、井原正巳さんと同期で、「選手としてのキャリアでは差を付けられたけど、指導者としては負けない」と以前おっしゃっていました。ミョンヒさんも同じような思いはありますか？

「そうですね、ありますよ。僕が監督をさせてもらったのは36歳のとき。そんな年齢でJ1の監督を務めた同級生はいないと思うし、僕が最初に監督をしたシーズンには、フェルナンド・トーレスがいて、金崎夢生、権田修一、小野裕二、高橋秀人……と、個性の強い選手がたくさんいたんですけど（笑）。残り5試合、彼らがひとつになって凄いパワーを発揮してくれた。監督が頼りないから、ひとつにならなアカンな、と自分たちで腹を括ったんだと思います。そこは頼もしかったし、逆に面白かったです。トーレスとは2つ違いなんですが、彼は紳士だったし、最後までしっかり戦ってくれた。そこから曲がりなりに4シーズン目ですね」

2018シーズン、降格危機の中でトーレスらがまとまりを見せて残留を果たした©Getty Images

――最初は5試合だけのはずが、19年シーズンも途中就任されて。

「次のシーズンは24試合ですか。そして昨年は1年間監督をやらせてもらった。すべてがいい経験になっています。トップチームのコーチも経験しましたけど、やっぱり監督とコーチは違う職業だと感じましたし、選手としてのキャリアと指導者としてのキャリアも別だと思うので、プライドはしっかりあります。ただ、現役時代に彼らから受けた衝撃は今も色褪せないし、リスペクトは変わらない。ひとつだけ勝るものがあるとしたら、先に引退して勉強させてもらって、先にこういう経験をさせてもらっているということ。指導者としては彼らよりも常に先を走り続けたいなと。負けたくないというより、その表現のほうが正しいかな。それに阿部には、まだまだ現役で頑張ってほしいですしね」

僕らには失うものは何もない

――最後に、4月7日に首位の川崎フロンターレ、18日に2位の名古屋グランパスとの対戦が控えています。3月の躍進を受けて、警戒・対策してくるチームも増えてくるなかで、改めてどういう戦いを見せていくか。ここから何が問われると感じていますか？

「アビスパ福岡戦、セレッソ大阪戦と慎重になってしまったのは事実。もしセレッソと引き分けたり、勝ったりして、無敗、無失点のまま川崎戦を迎えていたら……僕も失点しないための戦術を組んでいたかもしれないし、そうしたら、サンドバッグ状態だったと思います。そう考えると、セレッソに負けたことで解放された部分があります。

　セレッソは思いのほか出て来なくて、僕らに合わせてきた。相手に対策されるチームになってきたことをポジティブに捉える一方で、川崎は自分たちのスタイルを突き詰めてくるチームなので、うちの得意な形を出せると思います。トレーニングでは選手たちがすごく意欲的で、川崎戦に期待していいかなと僕自身が感じるくらい良かった。本当に肩の荷が下りたんだと思います。僕らには失うものは何もない。しっかりぶつかっていきたいと思います」

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