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「消火器で発煙筒を…」「お前、忍者か!?」坂田大輔が知るギリシャサッカーの“ヤバさ”【香川真司にエール】
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2021/03/06 11:00
坂田大輔はギリシャ時代、ELでマンチェスター・シティとも対戦した
“2強以外”のスタイルと、日本人に求められる特性とは
最近はやや勢力図が変わってきているが、ギリシャスーパーリーグのタイトルは、パナシナイコスやAEKなど、首都アテネを本拠地とする3クラブにほぼ独占されてきた。中でも圧倒的な戦績を誇るのがオリンピアコスだ。坂田さんがいた頃も、「パナシナイコスも強かったけど、オリンピアコスは頭抜けて強かった。そういうところには勝ち点1でOKみたいなサッカーを徹底していました」と、厳然たるヒエラルキーがあった。
そのビッグ3に次ぐ位置にいるアリスでさえ、格上相手には守備から入る戦い方を徹底していた。坂田さんの加入直前までアリスを率いていたエクトル・クーペルも、守備に比重を置いてEL出場権をつかみ取っていた。
「半年間で監督が2、3回替わりましたが、どの監督も基本的に守備から入るサッカーでした。前線の選手にも、プレッシャーに行くのはここまで、ボールを持ったらこの選手にこういうふうに預けろということを徹底していました。ギリシャ語が分からなくて高めのポジションを取ったりすると、『おいおい、ちょっと待って』と止められたり」
「ラダーをやると『お前、忍者か!?』」
一方で、勝ち点奪取が必須の格下相手には、フォーメーションも攻撃的に変えて勝ちにいく。相手との力関係によって戦い方は変わるが、「日本人選手」が求められるものは常に一緒だったという。
「俊敏性や走力、体力的なものですね。練習でラダートレーニング(はしご状のゴムなどを地面に敷き、ステップワークなどを高めるメニュー)をパパパっとやると、『お前、何なんだ!? 忍者か!?』とチームメイトに驚かれました。日本人選手が圧倒的に上回る敏捷性などを好んで、監督は起用しようとしてくれていました」
坂田さんも本来のFWよりサイドハーフとしての起用のほうが多く、カウンターで何度も繰り返す上下動も重宝された。フィジカルが強い選手たちの中でプレーすることで自然と体つき(ウェイト)も逞しさを増し、動きのキレを落とさないことには気をつかったというが、こうした「武器」は香川も備えている。必ずや、ギリシャでの成功の助けとなるはずだ。