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「消火器で発煙筒を…」「お前、忍者か!?」坂田大輔が知るギリシャサッカーの“ヤバさ”【香川真司にエール】 

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杉山孝

杉山孝Takashi Sugiyama

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photograph byGetty Images

posted2021/03/06 11:00

「消火器で発煙筒を…」「お前、忍者か!?」坂田大輔が知るギリシャサッカーの“ヤバさ”【香川真司にエール】<Number Web> photograph by Getty Images

坂田大輔はギリシャ時代、ELでマンチェスター・シティとも対戦した

 アリスにいた当時、坂田さんがよく面倒を見ていた若手がいた。

 昨夏にポルトからパリ・サンジェルマンへ移籍したダニーロ・ペレイラだ。いまやポルトガル代表でも主力となっている守備的MFだが、当時はまだ線の細い19歳だった。その原石がギリシャで手荒くも磨かれ、大きく飛躍していった。坂田さんがアリスを選んだのも、ヨーロッパリーグに出て他国リーグの目に触れることで、その後を切り拓けると考えたからだった。

香川に“CL、ELでのアピールを”とエール

 国内のビッグクラブ経由で若手が羽ばたく一方、オリンピアコスが擁するような各国の元代表クラスでさえも、4大リーグなどに返り咲くことは簡単ではない。ただし、ショーウィンドウに出れば可能性は高まる。PAOKは昨夏も含めて2度、CL予選の最後の段階で涙をのんでいる。香川はCL出場のラストピースとなるのか。元日本代表MFの今季、そして未来は……。

「もともとヨーロッパでやっているから、環境がどうこうということはないと思います。あとは、ギリシャのサッカーにどれだけ適応するか。PAOKは強いチームで、腰が引けたサッカーをするわけではありません。そういうチームが創造力やテクニックがある選手を探していて、その理想に合ったから連れてこられたんだと思います。だから、持っているものを出していけば、試合に出られるはずです。もう一度大きい舞台に立ちたいならば、CLやELでアピールすることが必要だと思います」

敗戦後、スタジアムに2時間閉じ込められたことも

 EL予選出場権獲得のために鍵となる試合を落とした坂田さんたちは、怒ったサポーターが起こした暴動でスタジアムに2時間も閉じ込められたことがある。翌日からの連休では、「街に出ないように」とのアドバイスも受けた。

 スタジアムは殺気立っていたが、国家的財政危機に見舞われているはずの2011年のテッサロニキでは、皆が朝からのんびりとコーヒーを楽しみ、悠然とした時間が流れていた。テッサロニキでの半年間で、坂田さんが目にした日本人は、空港で話しかけられた観光客を含めて2人だけ。遠い異国から来た助っ人に、街の人々は料理をサービスし、気軽に声をかけてくれた。

東日本大震災時にはサポーターが……

 自宅のテレビがまだ映らなかったある日、練習場に到着すると「ツナミ、ツナミ」「日本に帰ったほうがいい」と、まだ情報を知らなかった坂田さんにチームメイトが駆け寄ってきた。その東日本大震災の直後の試合では、サポーターが坂田さんを慰め、勇気づける横断幕を出してくれた。

「人に恵まれたのかもしれませんが、試合のときは別として(笑)、普段からそういう優しさがある人たちでした。ギリシャ人はものすごく温かい人たちで、本当に良くしてもらいました」

 10年ごときで、悠久の歴史を誇る国柄が変わろうはずもない。

 ギリシャには、他の国にはない熱がある。

香川真司が加わったPAOKの”怪しすぎる会長とクラブの不安要素とは”も関連記事からご覧になれます>

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