マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
昨季100試合以上出場のキャッチャーは2人だけ…なぜプロ野球では“名捕手”が生まれにくくなった?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/02/24 18:06
プロ野球史上歴代2位、3017試合に出場した野村克也
さらに、まだレギュラーを獲りきれていないが、広島・石原貴規(2年目・天理大)、横浜・嶺井博希(8年目・亜細亜大)、楽天・石原彪(5年目・京都翔英高)にも、私は「いい匂い」を感じている。
ソフトバンク・ドラフト3位キャッチャーも楽しみ
「昭和」から30年以上が経過して、時代の変遷と共に「野球」も変わった。
ディフェンスの名手が「名捕手」として長くレギュラーに君臨するプロ野球から、ヤクルト・古田敦也捕手の頃からか、「打てる捕手」という価値観が定着し始めているようだ。
さらに、投手が相性の合う捕手を「相棒」として選ぶようにもなった。夏場の高温、多湿……ただでさえ重労働の捕手にさらなる「負担」が加わってもいる。
すでに1人の絶対的レギュラーマスクが君臨するには、「環境」が合わなくなってきているのかもしれない。バッテリーのあり方は「多夫一妻制」から「多夫多妻制」に移行しつつあるのだろうか。
近年では、身体能力の優れた捕手が多くプロに進んでいるように見えるのだが、 一方で、優れた技術と豊かな個性を兼備した「いい匂いのするキャッチャー」も「プロ野球」に現われてほしい。
そういう意味では、今年、ドラフト3位でソフトバンクに入団した牧原巧汰(日大藤沢高・176cm81kg・右投左打)には、私は久しぶりに、ものすごく「いい匂い」を感じながら、その行く末をとても楽しみにしている。
屈強な体躯と強肩……身体能力の高さは、トレーニング理論の進化と共にどんどんレベルアップするだろう。その一方で、「野球小僧」たちの成長の土壌となる少年期の野球が、ちょっと「柔らか頭」になって、その候補たちを健やかに成長させることのできる「畑」になれれば、パワーと頭脳と知恵を兼備した「しゃれ」のわかる捕手が、この先もっと現われてくるのではないだろうか。
ひょっとしたら、今、この時代が、そういう流れになるかどうかの「分岐点」のような気もしている。
(【前編を読む】「野球やめなきゃいいな…」少年野球の現場で考えた“4~6mの差” なぜ“名捕手”は生まれにくくなった? へ)