プレミアリーグの時間BACK NUMBER
奇才ビエルサの下で覚醒 リーズのバムフォードは“ヤワなお坊ちゃん”から頭も育ちもいいストライカーに
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/02/22 17:00
ビエルサ率いるリーズは、いまプレミアで最も観る価値のあるチームの1つだろう。そんなチームを牽引するのが遅咲きのストライカー、バムフォードだ
建築士の父親を持つバムフォードは、億万長者の息子ではないが、裕福な家庭に育った部類だ。
コロナ禍で、休校中の給食支給継続を政府に訴えたマーカス・ラッシュフォードの活動が広く讃えられたように、プレミアリーガーのなかにも恵まれない環境で育った選手が少なくない。現チームメイトのフィリップスも、少年時代に給食券のお世話になった現役選手の1人だ。
親の勧めでバイオリンを習い、大学生になる選択肢もあったバムフォードのような例は、非常に珍しい。
だからと言ってハングリー精神に欠けているとは限らないが、チェルシーを去るまでクリスタルパレス、ノリッジ、バーンリーと続いたレンタル移籍中、リーグ戦先発が2試合、出場数も計19試合に限られた背景には、英国人監督下のチームスタッフが抱く先入観があったと理解できる節もある。
ついにたどり着いた“安住の地”
バムフォードにとってリーズは、9クラブ目にして過去最長の3シーズン目を過ごしている所属先であり、不利なフィルターなどなく、ハードワークも利くストライカーだと認識してくれた外国人監督の下、プレミア選手としての自分を証明する機会を与えてくれたクラブだ。
最前線でのプレッシングに始まる守備面の献身は、バムフォード自身が「ノンストップ」と表現するビエルサ・スタイルには欠かせない能力である。
「戦術狂」とまで言われる指揮官が信頼を寄せる理由には、緻密な戦術を的確に理解する賢さもあるに違いない。
優秀な成績を収めたAレベル(大学入学資格)で選択科目の1つだったフランス語は、レンヌ経由で今季からサポート役に加わっているブラジル人ラフィーニャとの意思の疎通にも役立っていることだろう。
伸びしろ十分。課題は決定力
今後、決定力がより高まれば、ビエルサ監督から全幅の信頼を得られるだろう1トップだ。
バムフォードはペナルティーエリアの縁からカーブをかけた左足シュートで2部における初ゴールを記録したダービー時代から、簡単ではないゴールを普通に決める一方、決めて当たり前と思われるチャンスを逃す傾向があった。
その印象は、現在も変わらない。
先のアーセナル戦を終えた時点でのスタッツを見ても、リーグ戦でビッグチャンスを逃した回数は、自信低下が指摘されるティモ・ベルナーを上回る16回を数えている。
もっとも、チャンス供給には事欠かない攻撃的なチームでは、細かいことは気にしない性格がプラスに働く。
バムフォードは、枠内シュート数も最多タイの42本だ。