プレミアリーグの時間BACK NUMBER
奇才ビエルサの下で覚醒 リーズのバムフォードは“ヤワなお坊ちゃん”から頭も育ちもいいストライカーに
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/02/22 17:00
ビエルサ率いるリーズは、いまプレミアで最も観る価値のあるチームの1つだろう。そんなチームを牽引するのが遅咲きのストライカー、バムフォードだ
「非エリート」たちが演じる“スリル”
リーズの主軸は、チームの心臓に当たるアンカーを務め、イングランド代表に成長したカルバン・フィリップスを筆頭に、年代別代表に縁のなかった「非エリート」系だ。
2月14日のアーセナル戦は2-4で敗れたが、リーグ戦23試合を終えた時点の得点数は40。消化試合にばらつきはあるものの、チェルシーと並んで5位タイだ。
一方、失点数42はクリスタルパレスと並んでワースト2位タイだが、すでに勝ち点が30ポイント台に乗っている事実を考えれば、打ち合いを恐れないチームの「スリル」と受け止められる。
残る15試合でも平均1.2ポイントの奪取率を維持できれば、最終的には50ポイント台。降格の心配がないばかりか、トップ10フィニッシュさえ可能な位置につけているわけだ。
つまり、ビエルサ監督が率いるリーズは後半戦早々の段階で「プレミアで通用するのか?」という開幕前の問いに答えを出したと言える。
プロ10年目で覚醒したストライカー
筆者がリーズ戦を観たいと思う理由には、「通用しないのでは?」と思われていた選手の存在もある。ビエルサ体制が発足した夏に移籍した、パトリック・バムフォードだ。
27歳のセンターフォワードは、アーセナル戦前週のクリスタルパレス戦(2-0)で自己通算100得点目を記録した。ただし、今季を除けばプレミアでの得点歴は1度しかない。
プロ10年目で訪れた本格的なプレミア初挑戦の舞台で、得意の左足と高打点のヘッドで「通用する」ことを証明しているのが、今季のバムフォードだ。
不遇のチェルシー時代
遠回りした原因を一言で言えば「チェルシー」になる。
2012年1月、ノッティンガム・フォレスト(2部)から獲得された当時18歳は、合流初日のウォームアップ中に滑って尻餅をついた珍エピソードが凶兆だったかのように、「若手不毛」の犠牲者となった。
レンタル移籍を繰り返した挙句に売却されて、チェルシー所属が契約上だけに終わった若手は他にもいるが、バムフォードは下部リーグへのレンタル移籍で結果を残しても、チェルシーではチャンスを与えられなかった。