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将棋、クイズ…なぜ“頭脳ゲーム”に人々は熱中するのか? スポ根漫画「数学ゴールデン」の作者に聞いてみた 

text by

雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph by藏丸竜彦/白泉社

posted2021/02/11 11:01

将棋、クイズ…なぜ“頭脳ゲーム”に人々は熱中するのか? スポ根漫画「数学ゴールデン」の作者に聞いてみた<Number Web> photograph by 藏丸竜彦/白泉社

学問としてではなく、競技として数学を捉えた異色のスポ根漫画「数学ゴールデン」が今話題だ

 ただ、生徒たちに教えていると、テスト前にはみんな質問に来たり、点数を取るためにみんな一生懸命勉強していることに気づいたんですね。そんな経験から面白さが分かり始めたというか……」

なぜ今「数学オリンピック」だったのか?

 作品の冒頭で、小野田が全校生徒の前で数学オリンピック日本代表入りを宣言する場面がある。それは作者自身の、学生時代になんとなく距離を置いてしまった数学というもの対する”愛”の表明にも思える。青春の中に残した悔いをこの作品の中で昇華していくという宣言。同じような状況にあるかもしれない今の学生へメッセージがこもっているのだろう。

「だから、僕ももう少し数学に対して何かできたんじゃないかという羨ましさで『数学ゴールデン』を描いているところもあります。もっと勉強するという青春があってもいい。そういう物語を知っていれば、自分も前のめりに勉強できたのかなと思うんです」

 大学を卒業する頃に漫画を書き始めた藏丸は、「漫画家とか物書き」を目指して22歳の時に鹿児島から上京した。フリーターをしながらの東京生活。「フラッと出てきてフラッと帰った」と言うように、夢を叶える確たる道を見出せないまま、数年経って地元に帰った。

 次の転機は30歳で訪れた。私立の高校からは正規職員採用の打診を受けていたが、小さな漫画賞を受賞できたことに背中を押された。「ラストチャレンジ」の覚悟で再び東京へ。プロ漫画家の育成支援をする「トキワ荘プロジェクト」に参加し、同プロジェクトの期限である3年間を意識しながら試行錯誤の日々を繰り返した。

「賞をもらった作品は、目の前にいる子が幽霊だったというようなよくある感じの話でした。その後もファンタジーやSFを求められている感じがあったんですが、なかなか突破できなくて……。そこで思い切って、自分の武器を生かして数学オリンピックを描いてみたら突破できたんです。描きたかったというより、もうそれを描くしかなかった」

ポップなコンテンツとなってきた“勉強”

 今の時代は将棋やクイズなど、さまざまな頭脳ゲームが人気を集めている。藏丸も東大王の伊沢拓司がメンバーのクイズメディア「QuizKnock」が注目され、YouTubeでも教科の中では数学が特に閲覧者の多いコンテンツになっていることを知っていた。知的なもの、知性に対する受け止め方が変わってきている。『数学ゴールデン』の執筆のきっかけは、そんな時代の空気感を感じたことも理由だった。

【次ページ】 形のない知識を表現する「ほどける」

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