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将棋、クイズ…なぜ“頭脳ゲーム”に人々は熱中するのか? スポ根漫画「数学ゴールデン」の作者に聞いてみた
posted2021/02/11 11:01
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
藏丸竜彦/白泉社
いよいよオリンピックが開催される。
1月の予選を経て、2月11日には本選が開催。日本の精鋭たちが集まって代表候補が選抜された。そして、7月には世界のトップが集う夢舞台が待っている。開催地はロシアのサンクトペテルブルクだ。
あれ? 今度のオリンピックって東京じゃなかったっけ? そうです。これはオリンピックと言っても「数学オリンピック」の話。高校生以下の学生が数学の超難問に挑み、その点数で競い合う世界大会が存在しているのだ。
学問としてでなく、競技としての数学。そのユニークな点に着目した漫画が2019年9月からヤングアニマルZEROで連載中の『数学ゴールデン』である。
作者の藏丸竜彦は高校や塾で教えていたこともある元数学教師だった。
なぜ数学嫌いは多いのか?
「数学って数字を扱うので、冷静とかドライなイメージを抱きがちですが、実際はそうじゃないんです。数学オリンピックのメダリストの方に話を聞いても、淡々とした中に沸々と熱いものを抱いている。すごく負けず嫌いで、自分が解けない問題があったり、それを解いている人がいることが許せなくて、解けなかったその日は泣くと。
スポーツでも悔しさがありますが、数学が解けない悔しさも独特のものがあると思うんです。だからみんな自分が否定された感じがして、数学を嫌いになっていくんじゃないでしょうか」
『数学ゴールデン』は、第一志望の高校に落ちながらも数学にすべてを捧げ、数学オリンピック日本代表を目指す高校生・小野田春一が主人公。同じく数学を愛する同級生の七瀬マミらと競い合いながら、周囲からは無謀と見られる目標へと突き進む姿が描かれている。
藏丸自身も主人公の小野田さながらに、さぞや数学愛に満ち溢れた学生だったのだろうと思いきや、むしろその逆だったという。
「父親が中学校の国語の教師で、どちらかというと教育熱心な家庭だったと思います。でも自分は正直それが嫌でした。勉強しろと言われるのも嫌で、それが高校時代まで続いてしまった。その後、数学教師になったのも、自分で望んでというよりは、そうするより他になかったという面がありました。