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北京五輪でメダルを獲るために…鍵山優真が国体の公式練習で見せた、新・4回転ループの真価とは
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2021/02/07 17:03
1月28日に行われた国体のフリーで鍵山優真は175.70点を記録し、合計270.82点。2位の佐藤駿に30.77点差をつけて優勝した
「今のところは賭けのようなところがあります」
この成功を自信に、鍵山は、今季のジャンプ構成をより戦略的に考えた。
トップの男子は、連続ジャンプの2つ目以降に「3回転トウループ」や「1回転オイラー+3回転サルコウ(またはフリップ)」、「2回転トウループ」を入れるケースが多い。羽生や宇野でも、ルール上、2回転トウループを入れざるを得ない。そこで鍵山はこう考えた。
「今年は『4回転トウループ+3回転トウループ』を跳びたいので、そうなるとどうしても、演技後半の連続ジャンプで『2回転トウループ』をつけることになってしまいます。でも、できればプログラムのなかで2回転を跳びたくない、という気持ちがありました。それで、演技後半に『3回転ルッツ+3回転ループ』を入れるしかない、これを試合で跳べたら会場が盛り上がるな、と考えて、毎日練習するようになっていきました」
初めて跳んだ10月の関東選手権では、見事に成功。フリーで188.75点というハイスコアをマークし、その得点源になった。
「セカンドの3回転ループというのは、ちょっと挑戦的な、今のところは賭けのようなところがあります。今回降りることができたので自信になりましたし、これから安定させていきたいと思います」
右足だけでケンケンしている感じ
しかし、鍵山自身も「賭け」という言葉を使ったように、本番一発で決めるにはリスクのあるジャンプでもあった。
それは技術的に考えるとよくわかる。連続ジャンプで「トウループ」をつけるか「ループ」をつけるかは、求められる精度がまったく違うのだ。
もし「トウループ」をうしろにつけるとすれば、3回転ルッツを着氷した右足で滑りながら、左足のトウを突いて踏み切ることになる。右足を滑らす間に、着氷でのわずかな重心のブレを直すことができ、さらに左足を突くことで両足になるため高さや飛距離も出しやすい。
ところが「ループ」をうしろに付ける場合は、3回転ルッツを着氷した右足でそのまま跳ぶ。イメージとしては、右足だけでケンケンしている感じだ。3回転ルッツの着氷ですこしでも姿勢が悪くなったらループを踏み切ることさえできない。また着氷した右足でリズムよくバネのようにループを跳ばないと、高さが足りずに回転不足になる。