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北京五輪でメダルを獲るために…鍵山優真が国体の公式練習で見せた、新・4回転ループの真価とは
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byHiroyuki Nakamura
posted2021/02/07 17:03
1月28日に行われた国体のフリーで鍵山優真は175.70点を記録し、合計270.82点。2位の佐藤駿に30.77点差をつけて優勝した
「一時期トラウマになっていたんです」
実際のところ、関東選手権では成功したものの、11月上旬の東日本選手権では回避。11月下旬のNHK杯ではループが1回転になり、12月の全日本選手権は成功した。本番での成功率は50%。しかしリスクを背負ってでもトライしてきた成果が、正月明けに現れた。4回転ループ習得への、後押しになったのだ。
もともと昨年春から4回転ループの練習を試みていた鍵山だったが、これまでは踏み切るときにエッジが上滑りして、1回転になってしまったり、跳ぶ前に転倒してしまうことが、何度もあった。
「今までは、羽生選手みたいな(左足から右足に踏み換える)跳び方でやっていたんですが、自分にはその跳び方が合っていなかったみたいで、踏み切りで抜けることが多くて、一時期(失敗が)トラウマになっていたんです」
宇野昌磨の跳び方でやってみた
この技術については、羽生自身が、こう解説している。
「4回転ループは、力と回転のバランスが難しいジャンプです。思い切って(力をいれて)跳ぶと、ツルッと抜けてしまいやすい。エッジ系のジャンプは氷の状態に左右されやすく、試合で入れるにはリスクがあります」
氷の感触をとらえる絶妙な感覚は、羽生が長年にわたり氷と対話してきたからこそ掴んだ、至難の業なのだ。
ところが、1月4日に出演した名古屋スケートフェスティバルで、鍵山には新たな発見があった。
「宇野昌磨選手と一緒に練習したときに、スリーターンから入る4回転ループを跳んでいて、そのほうが(エッジが)抜けないですし跳びやすそうだなと思って、真似して自分もその跳び方でやってみたら、意外と行けたんです。また友野一希選手もスリーターンから4回転ループを練習していたので、『スリーターンからの入り方で抜けたことありますか?』と聞いたら『ない』と話していました。それで、スリーターンからの跳び方が自分には良いんじゃないか、と思いました」